アクアコミュニケーターの知恵

 

 

水と地球環境のはなし  |  Story of the global environment and water


 

企業に求められる「水リスク」への備え

 

日本のビジネスマンにとって、これまで「水問題」は存在しなかった。

私が水の話をしても、

 

  • 「なんで水のことを学ぶ必要があるのか?」
  • 「水の課題なんて存在しない!」
  • 「一部の環境意識の高い人だけが感じているだけだろう」

という反応がほとんどだった。

私は、そうした人に出会うにつけ、「本当にそうだろうか」と思い続けて来た。

 

日本に暮らしていると実感がないが、世界では今、深刻な水不足が進行している。

世界の人口は2050年には90億人を超える見込みだ。

人口が増加すれば、当然、食料の増産に迫られる。そのために必要なものは何か。

水だ。

さらに新興国の工業生産が上昇することで工業用水需要も上昇する。

しかも水には石油における、石炭、ウランなどといった代替物がない。

水は水でしか補えない貴重な資源なのだ。人口増加と経済発展で、世界中で水不足が加速度的に進行するのは必至である。

 

世界的に見ると、企業が水リスクに備える動きがでてきた。その影響は当然日本企業にも及ぶだろう。

2012年10月、KPMGは世界の大企業250社のCSRレポートの水不足に関する記載について興味深い調査報告書を発行している。

この報告書によると、

 

  • 世界の大企業250社の76%は、水の問題について自社のCSRレポートに記載している。
  • 傾向として、水不足に深刻に悩まされている国の企業のCSRレポートは水の使用について記載があり、水が比較的豊富な地域の国の企業のCSRレポートには記載が少ない。
  • 世界250社の3分の1は、企業全体のウォーター・フットプリントについて開示しており、5分の1の企業が、企業の一部のウォーター・フットプリントについて開示している。
  • 世界250社のうちたった3社が、サプライチェーンの部分的なウォーター・フットプリントについて記載しているが、サプライチェーン全体のウォーター・フットプリントについて記載している企業はゼロである。
  • 世界250社の44%がCSRレポートで、水使用の削減プランの記載がある。そして約27%の企業が排水・汚染水の処理を実施していると報告している。
  • 世界250社のなんと60%が、CSRレポートにおいて水不足への対処についての長期的な戦略を発表していない。鉱山、自動車、薬品業界の企業が、その戦略について報告する可能性が最も高くなっている。
  • 世界250社のたった10分の1の企業が、水利用の変化に適応していく、または、自社とそのステークホルダーへの水不足の影響を軽減することを報告している。

このように世界では、サプライチェーン、バリューチェーンを意識した水のリスクについて検討し始めている。

そして投資家を含むステークホルダーからは、海外拠点、そして、サプライチェーン、バリューチェーンの水のリスクに関して理解することが期待されている。

 

拙著「日本の地下水が危ない」のなかにこんなことを書きました。

 

「パタゴニア社では、製品生産時にかかった水をブルーウォーター(河川水・地下水)、グリーンウォーター(雨水)、グレーウォーター(再生水)に分け、使用量を発表している。

パタゴニアのジーンズに使用されているコットンは乾燥農業(灌漑による給水を行なわず、直接的な降雨のみで営む農法)により栽培されている。

農業につかえるブルーウォーターの使用量を減らし、雨水を積極的に利用することで、企業として地球の持続可能性に配慮している。」

 

不足している水をどのように使って生産活動を行うかはとても重要なテーマであり、「水情報の開示」は、今後すべての企業に求められるようになるだろう。

 

 

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