アクアコミュニケーターの知恵
地域の水循環のはなし | Story of the water cycle in the region
震災以降伸びるペットボトル水
ペットボトル水メーカーがさらなる増産体制に入るようだ。
飲料総研によると、2011年のミネラルウォーター出荷量は、約2億ケース(1ケース12リットル)。
ペットボトル水の売上げは、2008年をピークに漸減傾向にあったが、2011年は前年比18%増。
震災後に水を備蓄した人、放射能汚染の懸念から、水道水を敬遠した人などがいたただろう。
サントリー「天然水」は、2011年に6250万ケースを販売。
2012年は6100万ケースの販売を見込む。
サントリーの微減に対し、競合他社は売上増を見込む。
日本コカ・コーラ、キリンビバレッジ、アサヒ飲料ともに増産するかまえだ。
一方で、メーカーの汲み上げ過剰を懸念する声も絶えない。
山梨県北杜市白州町は日本有数の水どころで、メーカー11社が取水する。
近年、周辺住民の井戸水が汚濁・枯渇する問題が発生し、企業の水利用の影響ではないかと懸念されている。
長野県安曇野市でも同様の動きがある。
名産品であるわさびを育てるには清浄な水が必要だ。
近年、わさび農家がわき水を調査すると、水量が減り続けていることがわかり、市側に地下水保全策を要望した。
メーカーの取水、市の水道水のための取水によって地下水位が下がれば、安曇野の産業や観光の柱の一つであるワサビ栽培ができなくなるのではと心配している。
農家側は、
「取水制限を設けるべき」
と主張するが、
メーカーは、
「地元の名水を全国にPRしている」
「地元の雇用など市と一体となって利益を生んでいる」
と主張する。
住民に不安が広がるのは、流域全体の水量や、企業がくみ上げている水の量などがわからない、情報共有と対話が十分に行われていないためだ。
現状では、水源の位置、取水量は企業にとって重要機密であるため公開されることは少ない。
しかし、水は流域にすむ、あらゆる動植物に恩恵を与えている。
流域にすむあらゆるものの共有財産である。
そして、無限にあるものではない。
メーカーは流域の水をつかって商売する以上、流域の水保全には責任を負う義務がある。
少なくとも
- 取水量に関する情報開示を行う
- 周囲に迷惑をかけるような取水は行わないこと
- 見せかけのCSRに止まらない水保全活動を行うこと
は必要だ。
そうしないと、住民の懸念を払拭することはできないし、無益な対立を生み出すことになるだろう。