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アクアスフィア・水教育研究所 代表 橋本淳司の公式ページ

アクアコミュニケーターの知恵

 

 

水と人々の健康のはなし  |  Story of people's health and water


 

PRによってつくられる「名水」「効く水」(2)

 

マスコミで「特別な効能あり」と紹介されて、ヒット商品になった「効く水」はこれまで数えきれない。

たとえば、ちょっと懐かしめのところで「海洋深層水」というものがある。

海洋深層水は水深が200メートルより深く、太陽の光が届かないところにある水だ。

海藻や植物プランクトンの繁殖が少なく清浄で、しかもマグネシウムなどのミネラル分が豊富に含まれている。

もっとも海水をそのまま飲むことはできないので、脱塩装置などにより塩分やミネラル分を除き、飲用に適するよう調整されている。

この水が体にいいといわれて大ブームになった。

含まれるミネラル成分が生活習慣病や中性脂肪、血糖値の低下に効果があるという研究結果が新聞、雑誌などに取り上げられてブームに火がついた。

ちなみにいま私の手元にある海洋深層水のパンフレットには、

「高血圧症、骨粗鬆症、便秘、動脈硬化などの予防に役立ちます」

と書いてある。

思い切り薬事法に違反している。

薬でないのに効果効能を書いてはいけないのである。

海洋深層水は発売開始当初は1リットル500~800円という高額にも関わらず、飛ぶように売れた。

そのため新規参入が相次ぎ、低品質の商品も出回った。

たとえば、鉱泉水に少量の海洋深層水を加えた水や、地下水に中国産のにがりを添加した水までもが、「深層水」の名で量販店の棚に参入した。

これなら海なし県でも簡単にできるが、それなりに遠慮しているのか「海洋」はとってある。

地中深くから採取した水と読めなくもない。

 

ある時、こんなことを聞かれた。

「でも『海洋深層水』そのものは体にいいのでしょう? ニセモノ(混ぜ物)が出回っていることが問題なのでしょう?」

この質問、「効く水」を考えるうえで核心をついたものだと思った。

 

「効く水」にはわからないことが2つある。

1つ目。

「○○水は体にいい」という情報が本当か嘘かわからない。

たとえば「海洋深層水は体にいい」と言われているが、それが本当なのか嘘なのかがわからない。

2つ目。

目の前におかれた「○○水」が「本物」か「偽物」かわからない。

 

「海洋深層水が体にいいか悪いか」という問題と、「この水は本当に海洋深層水なのか」という問題は、別の問題だ。

これは海洋深層水に限らず、「効く水」すべてにいえることだ。

さて、では海洋深層水は体にいいか。

これは正直のところまだよくわからない。研究途上で効能や効果について科学的、医学的に裏付けるデータが不足し、医学者のなかでも意見が別れている。

 

 

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