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アクアスフィア・水教育研究所 代表 橋本淳司の公式ページ

アクアコミュニケーターの知恵

 

 

水と人々の健康のはなし  |  Story of people's health and water


 

なぜ蛇の口から水が出るのか

 

巳年にちなんで、蛇口の話をしたいと思う。

水道水の栓(吐水口)のことを、なにゆえ蛇口というのだろう。

水道管がくねくねと曲がりくねっているから、出口の部分を「蛇口」というのだろうか。

蛇の口から水が出ている姿をリアルに思い浮かべると、気持ち悪くて飲めないという人もいるかもしれない。

それが、いま問題の水道離れにつながっているとは思わないが・・・。

でも最初から蛇だったわけではない。

明治時代に近代水道ができた頃は、蛇口ではなくライオン口だった。

当時は道端につくられた共用栓から水の供給を受けていたが、この栓は、イギリスからの輸入品だった。

そのため吐水口には、ヨーロッパで「水神」とされているライオンのレリーフがついていて、その口から水が出ていた。

ライオンというと、石けんや歯磨き粉などをつくっている会社のことを思い出す人もいるかもしれない。

水回り製品をつくっているから、ヨーロッパの「水神」にあやかってライオンという社名になったのかと思ったが、そうではないらしい。

一説には「17番目」に開発した歯磨き粉が大ヒットしたため、「NO17」をひっくり返して「LION」となったとか。

ピンとこない人は、紙に「NO17」と書いて、180度回転させてほしい。

ほら、百獣の王が現れたでしょう。

でも、これの情報は眉唾で、実際は「獅子印ライオン歯磨き」がヒットしたことに由来するそうだ。

当時は「象印歯磨き」「キリン歯磨き」など動物の名前の歯磨き粉が流行っていた。

ただ、ライオンでは「LION」も「NO17」も商標登録しているそうだ。

なぜなら他社が「NO17」という製品つくったらライオン製品にみえてしまうから。

トラブルを事前に防止しているんだろう。

話がずいぶん横道にそれたが、明治時代はライオンの口から水が出ていたわけだ。

その名残は、いまもときどき大浴場などで見かける。

やがて日本製の共用栓をつくられると、日本で「水神」とされる龍のレリーフがつけられたが、その後は「龍の化身」である「蛇」に簡素化されていった。

共用栓は正式名称を「蛇体鉄柱式共用栓」と言い、その吐水口は「蛇口」。

ちなみに中国でも龍のレリーフがつけられ、こちらは「龍頭」(りゅうず)。
 (日本では時計の時刻を合わせるツマミのことですね)

水の出口は、ライオン、龍、蛇とさまざまだが、いずれも「水神」であることは共通している。

わが家にも複数の水神様がいるのだと気づき、あわてて数えたら4人もいらっしゃった。ありがたいことだ。

 

 

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