週刊「水」ニュース・レポート    2013年8月21日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「国連『生命の水』:熊本市に最優秀賞  『地下水維持』情報世界に  国連事務局代表が講演」
  • (毎日新聞  2013年8月21日)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

熊本市の国連「生命の水」最優秀賞受賞を記念したシンポジウムが8月20日、同市であり、国連水関連機関調整委員会事務局のピラー・ゴンザレス・メヤウイ代表が講演しました。

代表は受賞理由について「さまざまな段階の協力体制の下、田の活用などで水供給を維持する姿が模範例となると評価された」と説明しています。

それはどういうことなのかを、今日は説明したいと思います。

熊本県の2008年度の地下水採取量は1億8000万トン。

これは17年前の75%。にもかかわらず地下水位は低下しました。

熊本県の生活用水の8割が地下水。とくに熊本地域は、ほとんど地下水に依存しており、多くの人がこの事実を知って驚きました。

原因は、田んぼというかん養装置が減ったことでした。

熊本地域の地下水かん養量(地表の水が地下にしみこむ量)は1年間に6億4000万トンとされます。

そのうちの3分の1を水田が担っています。とくに白川中流域の水田は、他の地域に比べて5〜10倍の水を浸透させていました。

ところが、かん養装置である田んぼが減ってしまったのです。

熊本地域の水稲作づけ面積は、1990年の1万5000ヘクタールから、2011年には1万ヘクタールになりました。

そこで熊本ではかん養事業がはじまりました。

1990年代後半、東海大学の市川勉教授が、「熊本市の江津湖の湧水が10年で20%減った」と報告。

ちょうど、その時期にソニーの半導体工場(ソニーセミコンダクタ株式会社・熊本テクノロジーセンター)が地下水かん養地域に進出することになrりました。

半導体生産は地下水を大量に使用するため、地元には不安が広がりました。

 

  • 「大量の水をくみあげられて周辺に影響が出るのではないか」
  • 「工場排水が地下水を汚染するのではないか」

これがきっかけとなって、さまざまな方策が検討された結果、ソニーは2003年度から地元農家や環境NGO、農業団体と協力し、地下水かん養事業をはじめました。

協力農家を探し、稲作を行っていない時期に川から田んぼに水を引いてもらい、地下水かん養する。その費用をソニーが負担するというしくみです。

 

近年は「くまもと地下水財団」が協力金というかたちで、地下水を使用する中小企業などからお金を集め、田んぼでの涵養をすすめています。

実施した農家に聞くと、

 

  • 「水を張っておくと雑草が生えてこなくていい。この時期の草取りはきついからから助かる」
  • 「連作障害がおきにくくなる」

と好評のようです。

収穫されたコメをブランド化して売る動きもあります。そういう商品を地域の消費者が積極的に購入することで、事業を支えることができます。

地下水かん養域でつくったコメを買うのも、立派なかん養活動なのです。

地元の人はコメを食べることで、農業を守ると同時に地下水も守れます。

東京や大阪などで仕事をしている人でも、コメを食べることで郷里を応援することができます。

こうしたさまざまな「しくみ」をつくったことが今回の受賞につながりました。

しかしながら、日本のメディアではほとんど報じられていません。

とてもすごいことなのに。

オリンピックで金メダルをとったくらい、日本人として誇りに思い、各地の自治体でお手本にすべき事例です。(そのままというより考え方やしくみを)。

ちなみに、このことに関して詳しく知りたい方は、拙著「日本の地下水が危ない」(幻冬舎新書)をご覧いただければと思います。

 


 

 

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