週刊「水」ニュース・レポート    2013年9月25日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「水道水なのにファン多数『ちちぶの水』橋立浄水場 珍しい『緩速ろ過方式』」
  • (東京新聞  2013年9月20日)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

あなたの飲んでいる水道水の浄水方式は何でしょうか?

浄水方式には、記事でとりあげらている緩速ろ過のほか、急速ろ過、膜ろ過などがあります。

今日は、緩速ろ過について解説しようと思います。

緩速ろ過は、水をろ過する「ろ過槽」にすんでいる生物群集の力で水を浄化します。そのため「生物浄化法」とも呼ばれます。

緩速ろ過は長年「物理的なろ過」だと誤解されていました。

誤解の原因は名称にあると思います。

緩速ろ過は英名を「Slow sand filtration」といいます。これは「ゆっくりと砂でろ過する」ことです。

この名前であれば、「ろ過槽」の「砂」で水を「ゆっくり」ときれいにする物理ろ過と思ってしまいますよね。誰だって。

しかし、実際には「ろ過槽」の表面にすんでいる生物群集の働きによって、水の汚れや雑菌を除去していることがわかり、いまでは「生物浄化」という認識が生まれています。

さらに「ゆっくり」も違いました。

緩速ろ過池では、池の中に藻類が存在します。藻類は、日中は光合成を行うので酸素を供給しますが、夜間は呼吸によって酸素を消費します。

ろ過速度が遅くなると、夜間に藻類と砂層内の生物群集による呼吸によって、酸素が欠乏しやすくなります。

生物浄化法の概念では、ろ過速度を落とすことは安全管理ではない、むしろ水質が悪化する可能性のある危険な管理とも言うことができます。

緩速ろ過方式のもう1つのよいところは、維持管理コストが安いことです。

建設費は急速ろ過と同じくくらいかかりますが、維持管理費はほとんどかかりません。

さらに長持ちするので耐用年数を考えると建設費用も割安ということになります。

つまり、ローコストで安全な水ができる技術なのです。

記事中にある「急な増水で川が濁ることが多くなり、安定供給のためには「急速」の方が適する」というのは正しい表現ではありません。

急な増水で水が極端に濁ったら急速ろ過でも対応できなくなるケースがあります。

緩速ろ過で濁り水に対応する場合、前処理施設(粗ろ過)で行います。ここで汚れを沈めてから緩速ろ過槽で水をきれいにします。

じつは、「緩速ろ過方式では濁り水に対応できない」と、慌てて急速ろ過に切り換えた自治体は多いのです。

そういうところは前処理施設(粗ろ過)のことは知りませんでした。

さらに急速ろ過に変えたものの、「大雨で原水が濁る日は年間数日。いまから思えば焦りすぎた」という自治体職員の方に何人も会いました。

 

新たに急速ろ過に切り替えるより、現在の緩速ろ過の浄水場をメンテナンスしながらつかったほうが、設備投資・維持管理コストが削減でき、かつおいしい水を飲み続けることができます。

「水道水なのにファン多数」なのは、緩速ろ過でできた水がおいしいからであって、急速に変えたらファンは、減るかもしれません。

じっくり考えてほしいです。

 


 

 

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