週刊「水」ニュース・レポート    2013年10月23日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「若者よ、狩りに出よう  獣害対策の担い手作り促進、福井」
  • (福井新聞  2013年10月21日)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

環境省主催の「狩猟の魅力まるわかりフォーラム」が福井県で開催されたことを伝えるニュースです。同フォーラムは、これまで9県で開催されてきました。

環境省はハンターを増やし、獣害を減らそうとしています。

農作物がシカやイノシシに荒らされる被害が多発し、農家が困っているという事情はわかります。

それについては何らかの対策が必要だと思います。

しかしながら、「すごいアウトドア!!」「あなたの知らないハンティングの魅力とは!?」などと遊び半分でハンター増やす環境省の政策には違和感を覚えます。

安易に動物の命を奪うことであり、そもそも根本的な問題解決にはならない可能性もあります。

たしかに森でクマに出合うケースが増えていますが、本来クマは臆病な動物で人と出合うことはありません。人の気配を敏感に感じとり、クマのほうから避けます。

ではクマが頻繁に人の前に姿を現すようになったのはなぜか。これは原生林が伐採されたり、あるいは人工林に代わったのちに放置されたために、動物の水やえさがなくなったことが原因の1つと考えられます。

クマはもともと広葉樹の原生林にすんでいました。

広葉樹林は、自然界の母ともいうべき存在で、秋には実をつけ生物に餌を提供し、晩秋、土のうえに葉を落とし、土壌を豊かにします。

落ち葉が腐ってできる腐葉土は1年で1ミリ程度とされ、何百年もかけてできた30センチくらいの表土で覆われると安定した森になります。

この土壌にしみ込んだ雨が、清浄な地下水となり、あるいは湧きだして、生物にとって(もちろん人間も含まれます)の命の水となります。

ところが原生林は減少の一途をたどってます。クマの出没はこのことと関係しています。

それはシカも同じです。

環境省や自治体はシカの年間捕獲目標を拡大しようとしています。

そして「シカの増加はハンターが減少したからだ」ととなえる研究者もいます。

「すごいアウトドア!!」「あなたの知らないハンティングの魅力とは!?」などと遊び半分でハンター増やす環境省の政策もこれに基づくものです。

 

これを見るとハンター数は1975年〜79年をピークにして減少しているので、ハンターの減少が獣害の増加の原因と見ることができます。

ですが、「全国狩猟者登録数」は1950年10万人以下と現在よりも少なかったのです。そして、その頃には獣害の報告はほとんどありませんでした。

つまり、統計資料の都合のよい部分だけ抜粋し、政策の正当化を図っていると見られてもしかたがないのです。環境省は「全国狩猟者登録数」の1920年から現在至るまでをオープンにしてから、ロジックの再構築をすべきでしょう。

実際には、シカの捕獲に力を注ぐのは対症療法に過ぎないのではないかと思われます。

なぜクマやシカが人里に出てくるのか、根本的な原因を考えて対策を立てるべきです。

多くの奥山がスギの木材生産地となり林道が張り巡らされ、近年は戦後植林されたスギ・ヒノキの人工林が放置され、クマやシカは棲みかを追われました。

やるべきことはクマやシカのすむ場所をいかに保全するかです。

とりわけクマは生態系ピラミッドの頂点に立ち、生活のために大きな面積を必要とすることから「アンブレラ種」と呼ばれます。

このような種の生息環境を保全することが、その傘下にあるその他の生きものを環境改変などの風雨から守ることにつながります。

忘れてはならないのは、そうすることが森を守り、水を守ることになり、人間の生活にとってもっともメリットがあるということです。

 


 

 

【その他の「水」ニュース】