週刊「水」ニュース・レポート    2013年11月13日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「大阪市:水道で新会社、職員大半を転籍  民営化案まとめる」
  • (毎日新聞  2013年11月9日)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

大阪市は民営化を目指すとしていた水道事業に関して、浄水施設などの設備は市が保有し、取水から給水までの水道事業は市が100%出資する新会社が行う「上下分離方式」とする計画案を決めました。

実施されれば、自治体全域の水道事業運営を民営化するのは全国初となります。(※民営化の5つのパターンは下記【補足】へ

橋下市長は会見で「市民負担を抑制するためには民営化しかない」とコメントし、民営化に伴って「水道料金値下げ」を実現するよう水道局に求めました。

民営化案では、浄水場(3か所)や配水池(10か所)の土地・建物のほか、市内に張り巡らされている総延長約5000キロの配水管などは市が保有し、30年間の事業運営権を新会社に売却する予定です。

事業を委ねることで財政負担が減るうえ、新会社は市が培ってきた技術力を生かして国内外の水ビジネスに参入し、収益アップを図る構想です。

民営化すれば、事業効率がよくなり、値下げも可能になる。

新会社の水ビジネスも成功する。

こうした薔薇色の報道がされていますが、そう簡単にはいかないでしょう。

 

まず、私たち市民は、本当に水道料金は下がるのかが気になるところでしょうが、結論はむずかしいと思います。

節水意識の浸透などにより、大阪市の2012年度の水道使用量は、1998年度に比べて約17%減少。料金収入も約23%減の611億円に落ち込んみました。2060年の全国の水需要は現在よりも、さらに4割程度減るとされており、大阪市にも同様の減少が起きると考えられます。

それに加えて今後、老朽化した配水管の更新や施設の耐震化などの出費も避けられません。

入ってくるお金は減る、出ていくお金は増える。

普通に考えれば、水道料金は上がるはずなのです。

なぜ上がらないかと言えば、値上げを決めると首長や議員が選挙にうからないからです。

 

橋下市長は、人員削減による経営のスリム化もねらっています。

現在約1600人いる水道職員の大半は、公務員の身分がなくなったうえで新会社に転籍となります。そうなると公務員のときよりも、リストラしやすくなります。そのうえで将来的には1000人体制にまで人員削減されることになります。

これは反発必至です。おそらく国鉄がJRになったときのような労使間の血みどろの戦いになると予想されます。

たしかにリストラすればコストは削減はできますが、水道業界には人材の高齢化、人材不足という別の課題があります。

高齢層の職員が多いので、そのうち自然と定年を迎え、人は減っていくので、無理なリストラが本当に必要なのかと疑問に思いますし、それよりも技術の伝承(教育)を急がねばなりません。

もう1つは、海外での水ビジネスです。

現在、公務員の身分のまま海外で水ビジネスを行ってよいものか、という議論があり、苦しい言い訳として「国際貢献」の枠組みのなかで行っています。

民営化された新会社であれば、その点、大手をふって水ビジネスを行うことができます。しかし、海外での水ビジネスは、政治的にもビジネス的にも卓越した戦略と経験が必要で、この新会社が海外で事業に成功する保障はまったくありません。

さまざまな点で熟考が必要な民営化案であり、政治的パフォーマンスの色合いが濃いのではないかと思われます。

ですが、この件は、今後の日本の水道事業に大きな影響を与えることになると思いますので、引き続きウォッチしていきたいと思います。

 


 

【補足】自治体の水道事業が民間と手を組む場合、以下の5つのタイプに分類されます。

 

  • 1)一部委託、アウトソーシング
  • 上下水道事業の管理業務など汎用性のある業務の一部を民間企業に委託する。契約期間は数ヶ月〜1年程度。

 

  • 2)包括委託、管理契約
  • 上下水道事業の管理業務の一部を民間企業に委託する。受託者である民間企業は業務の仕様を自らの裁量で決めることができる。契約期間は2〜3年程度。

 

  • 3)リース契約
  • 水道施設は公共側が所有し、事業の運営を民間企業に委託する。フランスやスペインに多い形態で、コストは水道料金で賄う。契約期間は10〜15年程度。

 

  • 4)コンセッション契約
  • 一定期間民間企業が資産を所有したうえで、事業の運営を民間が行う。施設の更新・拡張費用も民間が支払う。コストは水道料金で賄う。契約期間は25〜30年。新規にインフラを整備する場合のBOT契約(設計・建設および運転維持管理を一括して民間企業に委託。契約期間が終了したら施設は公共に返却)はコンセッション契約に類する。

 

  • 5)完全民営化
  • 公共水道事業が完全に民間企業に売却されること。公共機関の仕事は、水道料金やサービス水準の設定など規制に関する監督業務だけ。法律で公共機関の売却を禁ずる国も多く、実績はそれほど多くない。新規にインフラを整備する場合のBOO契約(設計・建設および運転維持管理を半永久的に民間企業に委託。施設は民間が所有)は完全民営化に類する。

 


 

 

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