週刊「水」ニュース・レポート    2013年12月18日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「地下構造物が水環境にどんな影響を与えるか」
  • (橋本淳司  2013年12月18日)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

建設工事が水環境にどんな環境を与えたかを「入門」的にまとめてみようと思います。

建設工事といってもとても範囲が広いので、今回は、

 

  • 地盤掘削
  • 地下構造物建設
  • 道路および鉄道建設

についてまとめてみようと思います。

 

  • 【1  地盤掘削】
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  • 地盤を掘削すると水が出てきます。この工事をスムーズに行うために、掘削地に井戸をつくってあらかじめ排水を行う工法があります。こうすると周辺の川や地下水の水量が減るケースがあります。これを避けるために、事前に、地盤、帯水層、地下水位などについて、調査を行います。

 

  • 【2  地下構造物建設】
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  • 1)橋脚などの点的構造物
  • 高速道路の橋脚を帯水層内に建設すると、帯水層の透水断面が小さくなるので、下流での地下水位が減ります。橋脚のような比較的小さなな地下構造物は、あまり影響がでないように思えますが、そうではありません。橋脚などによって、下流の井戸が涸れるなどの被害がでます。
  • これは地下水の流れに関係します。地下水は、地下の「水みち」を動いているので、そこを構造物によって遮断されると水涸れにつながります。「水みち」を把握するのはかなりむずかしいとされています。
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  • 2)地下鉄、共同溝などの線的構造物
  • 線的構造物は、帯水層が薄い場合には地下ダム的な働きをし、上流の水位は上昇し、下流の水位は降下します。

 

  • 【3  道路および鉄道建設】
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  • 1)斜面掘削による地下水源遮断
  • 山の斜面に地下水が流れています。一般にはそれほど厚くはありません。このような斜面を基岩まで掘削すると、崖すいの水は切り取られます。
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  • 2)トンネル掘削による地下水災害
  • 地下水の豊富な地盤にトンネルを掘削すると、底の抜けた風呂桶のような感じで、地下水が漏れ出します。大量出水により掘削工事は難航し、その地下水を用いていた地区の地下水が減少する災害がよくあります。

 

  • 平地のトンネル
  • 平地の場合は、砂や礫の層にある隙間を水が流れます。平地にトンネルを掘る場合、既存井戸があれば長期観測記録やボーリング資料を用いるシュミレーション手法を活用しながら計画を立てます。シールド工法といって、砂利を掘ったそばから既成の壁を組み立ててゆき、地下水がトンネル内に漏出するのを極力小さくする工法もあります。

 

  • 山岳トンネル
  • 地下水は、岩盤の亀裂の中に含まれています(火山地帯を除く)。これを「裂か水(れっかすい)」と呼びます。地下深い岩盤内にどのように亀裂が入っているのか、裂か水がどの程度存在しているのかわかりません。山岳トンネルを掘るときには、機械で岩を掘り崩し、一定の長さを掘り進めたところで壁にコンクリートを吹きつけ、鉄の棒で岩盤に密着させ、防水シートを張り、さらにコンクリートで内壁を構築します。

また、山岳トンネル工事の際には、徹底的にトンネル周辺の水を抜きます。これは【1  地盤掘削】と同じです。

 

次に、建設工事による水への影響の事例をいくつか紹介します。

 

  • <1967年 山陽新幹線の六甲・神戸トンネル建設>
  • 断層破砕帯での湧水が激しく、ここを突破するために長さ数十mの水抜き坑を12本掘りました。

 

  • <1999年 湖北トンネル>
  • 長野県を通る国道142号バイパスの湖北トンネル(岡谷市―諏訪郡下諏訪町)で異常出水とともに上部の山が陥没。その3か月後にも大量出水し、付近の沢や湧き水の水量が減りました。

 

  • <2003年 長野県飯山市>
  • 建設中の北陸新幹線飯山トンネルで掘削面が崩れ、大規模な土砂流出が発生しました。約190メートル上の地上部が直径48メートル、深さ約11~18メートルにわたり陥没。有識者委員会は、水を通しにくい2つの断層の間に水を含んだもろい砂岩層があり、掘削で崩れたと推定しました。現場から約1キロ離れた簡易水道の水源の1つが枯れたり、約1キロの農業用水源が減ったりしました。

 

  • <2006年 権兵衛トンネル>
  • 木曽谷と伊那谷を結ぶ国道361号「権兵衛トンネル」で大量出水し、工期が大幅に遅れました。

 

  • <2010年 山梨県笛吹市>
  • リニア実験線のトンネル掘削による水枯れ。

 

  • <1967年 山陽新幹線の六甲・神戸トンネル建設>
  • 断層破砕帯での湧水が激しく、ここを突破するために長さ数十mの水抜き坑を12本掘りました。

市内では、御坂町上黒駒などで、黒駒トンネル他工区(延長3100メートル)、御坂トンネル西他工区(同2800メートル)、御坂トンネル中工区(同2200メートル)のトンネル工事が行われています。

笛吹市御坂町の水源である一級河川「天川」が枯渇し、黒駒トンネル他工区付近では、同市八代町竹居の門林地区9世帯が生活用水などに使っている井戸が2010年1月ごろから減水。

現在、応急対応で市の上水道に接続していいます。

同市御坂町上黒駒の若宮地区でも一部住民が生活用水などとして使っていた簡易水道が渇水しました。主な被害は、自宅や地域で使っている井戸が渇水・減水した、池のわき水が減少、農業用水に使っていた沢水の枯渇などが起きました。

2011年夏には、上野原市秋山の無生野地区の棚ノ入沢が枯れました。

 

  • <圏央道トンネル>
  • 八王子城跡トンネルの工事で、城跡のシンボルの滝が水枯れ。裁判所は、判決で、圏央道トンネル工事による地下水への影響を認め、これにより高尾山の貴重な生態系が失われる可能性を否定できないとしました。

 

  • <箕面の山>
  • 箕面山を貫く箕面有料道路(全長5,600m)の影響で、滝の水量が2~3割減少してしまいました。現在、年間3000万円の電気代をかけて水を汲み上げ、滝の水量を保っています。事前調査では上流の川の水量が8割、滝の水量は3割減少することがわかっていました、800億円の工費をかけて施工しました。

 

次に現在、トンネル工事によって影響を受けそうだと懸念されているいくつかの場所を紹介します。

 

  • <高尾山の圏央道トンネル工事>
  • 高尾山は都市近郊では数少ない原生林に近い森が残る巨大な生命体。地下水脈があり豊かな土壌に水が保たれています。標高600メートルしかないのにブナの大木があり、1300種とも言われる植物が自生します。

 

  • <リニアの工事によって影響が懸念されている場所>
  • 下伊那郡大鹿村大河原の釜沢集落・・・集落の水源地の地下を路線が通る
  • 木曽郡南木曽町妻籠(つまご)・・・県の水環境保全条例に基づき水道水源保全地区に指定されている場所と路線が重なる(360世帯が利用)

 

  • <南アルプス横断トンネル>
  • 南アルプス横断トンネルは、静岡県から山梨県大鹿村に入るトンネル(約20キロ)。小渋川など2カ所の川を渡る橋を除き、実際には山梨県富士川町から豊丘村に至る延長約50キロと考えられます。

大鹿村周辺・・・深層崩壊の危険度が相対的に高いと国土交通省が評価する場所を通ります。

青木川周辺・・・もろい地質で破砕帯が連なっています。

地山圧力・・・3000メートル級の山の山頂とトンネルの標高差は約1000メートル。山の高さに比例してトンネルに「地山圧力」と呼ばれる重みがかかります。トンネルを掘ると大量の深層地下水が噴出し、地山圧力に耐えられるかという懸念。

大井川の水涸れ・・・富士川、大井川、天竜川という全く別の3河川の流域を、1本のトンネルで掘ります。大井川流域の水がトンネル内に漏出した場合、その水はポンプでくみ上げない限り、大井川には戻りません。大井川はかつて水涸れを起こしたことがあり、水生生物が死滅し、特産のお茶栽培にも影響ができました。水利権闘争の結果ようやく塩郷ダムから3~5立方メートル/秒の水が流されることになりました。しかし、リニア建設にともなう流量減少が2立方メートル/秒とされています。

虻川・・・本流の直下を約1㎞にわたり、土被り(トンネルの上の厚み)100~50mの薄さで通過します。川の真下をトンネルが走ることになり、工事の際には、たくさんの水がトンネルに流れ込むのではないかと考えられます。

 

最後に、ひとこと。

さまざまな調査報告を見ると、何かあったら水の補償はするとは書いてありますが、それは人間への水供給であって、生態系へ水を戻すとは書いていません。生態系が唯一の水の供給者なのですから、生態系の水を保全することが持続的に水につかう方法であるはずです。

 


 

 

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