週刊「水」ニュース・レポート    2014年1月8日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「ナノバブル発生装置が良好な海底環境を維持/横浜八景島シーパラダイスにて実証実験」
  • (橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

日本の湖、沼、内湾、内海などが酸欠状態になっているって知っていますか?

日本の多くの閉鎖性水域で「貧酸素水塊」が発生しています。「貧酸素水塊」とは、簡単に言えば、水が酸欠状態になることです。

弊害はいろいろありますが、もっとも顕著なのは水生生物への影響です。

たとえば、東京湾では、毎年春から秋にかけて「貧酸素水塊」が発生し、魚介類の生息に大きなダメージを与えます。低い層にとどまっていた「貧酸素水塊」が潮流などの影響で、水面近くに上ってくるときに青潮が発生し、魚介類が死滅することもあります。

 

つまり「貧酸素水塊」が増える=いきもののいない「死の海」が増える、ということです。

 

「貧酸素水塊」の原因のほとんどは、窒素やリンを含んだ生活雑排水が流入し、水が富栄養化することです。水底に沈殿したプランクトンの死骸が分解する過程で酸素を大量に使うために、水のなかの酸素が欠乏してしまうのです。

ですから抜本的な対策としては、流入するチッソ・リンなどの栄養塩を減らすことです。

そのほかの対策としては、

 

  • 「人工的に酸素を注入する」
  • 「水底に近いところを撹拌する」
  • 「ヘドロの上に砂をかぶせる(その部分では底質が有機物の少ない砂に変わるので有機物の分解による酸素消費は少なくなる)」
  • 「ヘドロを除去する」
  • 「浅場の造成する」

などがありますが、大規模な設備が必要なため多額の費用がかかったり、効果の継続しにくいものが多かったのです。

こうした閉鎖性水域の酸欠状態は、多くの自治体がかかえている課題でもあります。

 

そうしたなか昨年12月、興味深い発表会が行われました。

「ナノバブル発生装置」を活用して、閉鎖性水域の環境を改善した実験・検証についての発表でした。

実験は、神奈川県横浜市の株式会社安斎管鉄が作成したナノバブル発生装置を、約1年間、同市にある「八景島シーパラダイス」内に設置して行われ、八千代エンジニアリングが検証しました。

 

一口に「微細な気泡(バブル)」といっても大小さまざまです。水槽のエアレーション、シャワーヘッドから出る気泡のように直径1〜2ミリのものも「微細」と呼ばれることがありますが、ここでいう「超微細気泡」は顕微鏡レベルのもので、マイクロバブル、ナノバブルと呼ばれます。

 

「マイクロバブル」とは、50μm(ミクロン=1000分の1ミリ)以下の気泡のこと。50μm以下の気泡は、気液界面のイオンの力によって収縮する傾向があり、発生時には50μm以下の「マイクロバブル」だっだ気泡が、さらに小さな1μm以下の「ナノバブル」へと変化します。

 

ナノバブルの特徴は、水中に長期間とどまることです。それが水槽のエアレーションなどとは違います。ですからナノバブル発生装置によって、貧酸素水域に酸素を供給しれば、生物群集の働きが活発になり、ヘドロの分解が促進されたり、青潮や赤潮の抑制効果があると考えられます。

実験の結果、ナノバブル発生装置を設置したポイントでは、一般的に海底の環境が悪化する夏季においても、水生生物の個体数と種数を維持することができました。貧酸素耐性のないとされる甲殻類の増加も顕著であり、良好な海底環境が維持されたと考えられます。

実際の閉鎖性水域の環境を改善するには、装置の出力を高める工夫、稼働時期を延長するなど、いくつかの課題がありますが、大きな可能性を確認できたといえるでしょう。

今回の実験で使われたナノバブル発生装置は、イニシアルコストもランニングコストも従来の装置に比べて安いという特徴もあります。

水中に酸素を送り込む対策は、撹拌機など単純な技術のほか、これまでもさまざまな方法がとられてきましたが、一番の課題は注入した酸素の多くが水中にとけ込まず大気に逃げてしまうことでした。

ナノバブルによる酸素注入は、気泡が水中に長時間とどまるため、水底に酸素を効率よく送り届けることができます。

また、電源を太陽電池パネルから供給し、24時間連続運転を行うこともできます。

ナノバブル発生装置を稼働させることによって、酸欠状態の「死の海」が、水生生物がいきいきと暮らす湖沼、内湾、内海に復活する可能性があるのです。

 


 

 

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