週刊「水」ニュース・レポート    2014年2月5日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「パタゴニア日本支社の環境キャンペーン 『アワ・コモン・ウォーターズ』でのワークショップへ」
  • (橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

本日は、パタゴニア日本支社の環境キャンペーン「アワ・コモン・ウォーターズ(共有の水)」のワークショップをレポートします。

パタゴニア社は1988年の創業以来、自社が直面する課題の根底にあるものは「現代社会の成長と消費への傾倒」と捉え、責任ある企業を目指し、数々の活動を続けています。

同社のジェラルド・エイモス氏は以下のように語っています。

 

  • 「事業を推進するにつれ、自分たちの環境責任や社会責任に人々が気づき、自分たちの行動を変えていく様子を紹介することならできます。気づきは波及するもので、ひとつの行動は次の行動につながっていく ─ その様子も紹介できるのです」

パタゴニアの環境キャンペーン「アワ・コモン・ウォーターズ(共有の水)」は、人類と地球上に生息するすべての生物が必要とする水の、共有のバランスの重要性について考えるものです。

このキャンペーンの最終局面において、パタゴニアの全国直営ストア内で、営業時間後に1時間半ほどかけてワークショップを実施しました。

現代社会の都市生活において、きれいな水とその対極にある水汚染に注目ながら、川の上流から下流への水の移動、水の汚染を体感してもらうことで、生物多様性ときれいな水の関連性にも焦点を当てました。

 

 

  • 今朝飲んだ水はどこから来たか?

 

  • 「みなさん今朝はどこの水を飲みましたか?」

僕は、地図を見せながら参加者へ問いかけました。東京の人の約3割は利根川水系の水、約7割は利根・荒川水系の水を飲んでいるとされています。参加者は自分が普段使っている水道水はどこから流れて来て、どこへ行くのか…あらためて考えをめぐらせます。

続いてもう1つ問いかけました。

 

  • 「流域という言葉を聞いたことある方いますか?」

多くの手が上がります。ですが、聞いたことはあっても意味まで知っている人は少ない様子。そこで関東圏の河川流域図、地下水脈マップを投影し、この場所にすむあらゆるいきものが、この水を共有していることを話します。

そのうえで、「水差しを回そう」(プロジェクトWETアクティビティ)というアクティビティを行いました。参加者にカードが配られ、以下の役割が与えられています。

 

  • 「生態系」
  • 「ペットボトル事業者」
  • 「上流のまちの水道事業者」
  • 「半導体工場」
  • 「果樹園経営者」
  • 「稲作農家」
  • 「畜産農家」
  • 「都市下水道業者」
  • 「食品製造業者」

いろいろな役割はありますが、1つの流域のなかで仕事をしている(いきている)ので、全員が同じ水をつかっていることになります。

そのうえで、稲作農家であれば、どのように水を使うのか、どのように水を汚しているのかを考えます。

食品製造業者であれば、どのように水を使うのか、どのように水を汚しているのかを考えます。

中央の長いテーブルを流域の水の流れに見立て、その両脇に並んだ参加者は運命共同体です。

 

 

  • 河川水と地下水を使ってもどす

流域の最上流の生態系に2リットルの水の入った水筒が手渡されます。これが流域の水の総量です。なかみは見えません。

雨として降った水を浄化し、保めるのは生態系の働きです。生態系は唯一の水の生産者でもあります。

本来なら、生態系を構成するあらゆるいきものも水を使うのですが、今回はいちばん最後につかってもらうことにしました。

ほかの参加者は、最後に生態系のために水を残さなくてはなりません。

水の生産者である生態系に水を残せないということは、いきものたちの死を意味し、ひいては流域の水の減少につながります。それでは自分たちの経済活動に支障をきたします。

目的を確認し、生態系から受け取った水を上流から使っていきます。

水筒の水を自分の仕事に必要なぶんだけ、自分の前のコップに移します。

さらに仕事をすると汚れた水も出てきます。汚れた水を流域に返すことになります。その場合、スポイトで水筒のなかに醤油を数的たらします。

たとえば、稲作農家は、水をたくさんとりますが、それをすべて消費してしまうわけではなく、流域に戻しています。ただし、注意しないと汚れもいっしょに戻します。

工場でもたくさんの水を使います。あらゆるものを生産するのに水が必要だからです。そのための水を水筒からもらいます。

 

  • 「そんなに使うの?」「え!それを川に戻すの?!」

盛り上がる参加者の反応とともに「なるほどねぇ」という感嘆の声も交ざりながら、水筒は下流へとすすんでいきます。

こうして参加者は「流域のまわりにはさまざまな職業が存在している」こと、「河川水や地下水をみんなで分け合っている」ことを疑似体験していきます。

同時に、河川上流から下流へと水筒をまわすことで、各々の立場を越えて、共存するためにどうしたらいいのかという課題を考えるようになります。

 

さて、いよいよ水筒が下流にまで到達しました。結果として「生態系」に水を残せたでしょうか。

水筒の水をコップにあけてみます。残った水はごくわずか。それも醤油の色のついた水でした。

これではいきものたちにとって十分な水とはいえません。

流域は生物多様性のまとまりのよい自然生態系でもあります。

流域にはそれぞれの特性にあった生物がすんでいます。日本では、気候の多様性とあいまって、1400種の脊椎動物、35,000種の無脊椎動物、そして7,000種の維管束植物といった驚くべき生物多様性を生み出したのです。

しかし、流域の水は人間の活動にとって都合がいいように変えられてきました。

まちが拡大するにつれ、川の水はダムによってせき止められ、川岸はコンクリートで固められ、排水が流されました。

上下水道という人工河川は、上流の水をまちに引き、利用した水を海に流すバイパスになっています。

多様な生物にとっての命の血管網はやせ細り、生息環境の劣化が激しくなっているだけでなく、その影響は海岸線や海洋の生態系にまでおよびました。

持続可能なコミュニティをめざすなら、水を流域というくくりでとらえなおし、保全を考えていくとよいでしょう。そのためにもまず、自分がどこの流域に属しているのかを知ることからはじめるとよいでしょう。

このワークショップでさまざまな気づきと共感が得られたことが、僕の大きな喜びです。ありがとうございました。

 


 

 

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