週刊「水」ニュース・レポート    2014年4月2日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「密か?に成立した雨水利用推進法とはどんな法律か」
  • (橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

3月27日に「水循環基本法」が成立しました。これについては先週の「水」ニュース・レポートでお伝えしたとおりですが、同時に「雨水利用推進法」も成立したことをご存知でしたか??

知らなくてもしかたないです。まったく話題になっていませんから。メディアで唯一これを取り上げたのは「公明新聞」。この法案を提出したのが公明党だからでしょう。

「公明新聞」(3月28日)の記事には、

 

  • 「雨水利用推進法は、雨水を貯留する施設を家庭や事業所、公共施設に設置することを通じ、トイレの水や散水などに有効利用すると同時に、洪水を抑制することが狙い。国と独立行政法人の建築物は雨水貯留施設の設置目標を定め、地方自治体の建築物には努力義務を設定。地方自治体が家庭などを対象に実施する助成制度へ国が財政支援するほか、調査研究の推進や技術者の育成にも努める。
  •  
  • 雨水利用推進法は、公明党が2010年9月に立ち上げたプロジェクトチーム(PT)が立案。党PT座長の加藤修一参院議員(当時)を中心に、NPOや日本建築学会、製造メーカーの関係者などと意見を重ねて法案を取りまとめ、与野党の賛同を得て成立にこぎ着けた。」

とあります。わずか302文字なので、法律制定の背景や意義まではわかりませんよね。

そこで今日は、「密か?に成立した雨水利用推進法とはどんな法律か」をお話しします。

結論から言えば、ミニダムを小規模分散的に設置することにより、渇水と洪水を同時に対策しようというのが、この法律のねらいです。

みなさんもお気づきだと思いますが、雨の降り方は確実に変わりました。

広島県・嚴島神社には回廊の浸水回数が記録として残っています。嚴島神社は平清盛によって建造され、西暦1555年に毛利元就によって大改修され、それ以降、同じ場所で同じ標高に建っています。神社の神官が記録する日誌には、高潮によって神社の回廊が浸水したことが記されています。2000年以前は浸水回数は年間1、2回、多くても4、5回でした。それが2001年以降、浸水回数は毎年2桁と増加しています。

これについて毎年「異常気象」と言われていましたが、10年以上も同じことが続くのですから、「常態が変わった」と考えるべきでしょう。それには新しい対策が必要です。

これまで都市の水行政は、水が足りなくなったら上流にダムをつくればいいという考えでした。ですが、ダムで確保した水をポンプ導水で都会まで運ぶには大量の電力を使用します。

考え方を変えれば、水源は頭上にあります。東京都民の水道使用量は年間約20億トンですが、東京に降る雨は年間25億トンあります。しかも東京の水道の原水は、ほとんどを利根川、荒川、多摩川などの川に依存しているのですが、雨水のほうがはるかにきれいです。

そもそも水には、いろいろな物質を溶かすという性質があります。降った雨が地下水になったり、川の水になったりと旅を続けるうちに、溶け込む物質は増えていきます。その点、降ったばかりの雨は物質を溶かす機会がないのです。

水質汚染の指標の1つに「電気伝導度」というものがあります。

イオンや有機物といった水以外の不純物がまったく入っていない水は、電気を通しません。

反対にイオンや有機物が含まれていたら電気は流れます。

どの程度電気が流れたかを調べると、どれくらい水にほかの物質が含まれているかがおおまかにわかります。雨水の電気伝導度を水道水のそれと比べると、数分の一程度です。

雨水活用先進地の東京都墨田区では、個人住宅のなかに雨水をためるタンクを見かけます。屋根や駐車場に降った雨水をといから導き、タンクにためます。市販の雨水利用タンクを備え付けている人もいれば、ホームセンターなどで売っている大きめのかめやごみ容器を利用している人もいます。使わなくなった衣装ケースを雨どいの下に置いている人もいます。

たまった水はペットボトルに移し、トイレの流し水に使ったり、バケツやじょうろなどを使って、散水や植物の水やりに利用します。断水時の生活用水としても使えるし、煮沸、ろ過すれば緊急用飲料水にもなるでしょう。

なかには自宅の駐車場の地下に、巨大な貯水槽をつくっている人もいます。1トン以上の水が貯蔵でき、生活用水のほとんどをまかなっています。

都会ではそれぞれの家がタンクに雨水をためれば、無数のミニダムを都市におくことができます。かりに東京都内のすべての一戸建て住宅が屋根に降った雨をためたとすると、1億3000万トンの水が確保でき、これは利根川水系の八木沢ダムが東京都に供給している水量を上回ります。

都市型洪水の備えになると同時に、自己水源を確保できます。気候変動への対策であり、コストも対してかかりません。

ミニダムを小規模分散的に設置することにより、渇水と洪水を同時に対策しようというのが、この法律のねらいです。

今後、洪水対策の建設バブル(国土強靭化バブル)が起きるかもしれません。しかし、それは多額の建設費と維持管理費が必要です。それよりも家庭のミニダムでも対処する方法があるということを覚えていてください。

 


 

 

【その他の「水」ニュース】