週刊「水」ニュース・レポート    2014年8月19日号

 

 

 

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自治体の水道経営、とりわけ小規模自治体の水道経営は風前の灯火です。その理由と対策については、昨年5月の当レポートに書きました。

 

今回は、この課題の対応策としての「広域化」を考えてみたいと思います。

水道事業を下支えしているのは給水人口です。東京などの大都市は給水人口が多く、下支えする人数が多い。すると水道管路や浄水施設の更新などを行っても水道料金は安い。一方、小規模自治体は給水人口が少なく、下支えする人数が少ない。すると水道管路や浄水施設の更新などを行うと水道料金は高くなっていきます。

日本の水道事業は、中規模(10万人未満)以下の事業体が8割を占めます。よく、「職員数を減らしてコスト削減を図ればいい」という声を聞きますが、実際には、職員数20人以下の事業体も8割と、限界近くまで縮小していて、今後の水道管路の更新に耐えうる人的、資金的体力をもつ水道事業者はわずかです。

この状況を打開する方法として「広域化」があります。2014年4月1日に設立した、「岩手中部水道企業団」(ここでは新企業団とします)の例をお話します。

※水道企業団・・・・・地方公共団体の事務をほかの地方公共団体と共同で処理するために設ける一部事務組合。水道、ガス、電気事業など地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する場合「企業団」という。

岩手県北上市、花巻市、紫波町の3市町は、それぞれ自己水源から水を供給していたほか、「岩手中部広域水道企業団」(ここでは旧企業団とします)をつくり、一部共同して水道事業を進めてきました。

一方、少子化で人口減が進み、3市町の給水人口が今後10年間で5%減少すると予測できました。また、総延長2767キロの水道管は多くが昭和30〜40年代に整備されており、今後、多額の更新費用がかかる見込みでした。この点、全国の中小規模自治体と同じ問題を抱えているといえます。このため、事業を全て統合し効率的な運営を目指すことになりました。

以下に、事業統合の経緯を時系列で示します。

【事業統合の経緯】

 

  • 2002年:
  • 2004年:
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  • 2006年:
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  •  
  • 2009年:
  • 2011年:
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  • 2012年:
  •  
  • 2013年:
  •  
  • 旧企業団議会より「末端給水を想定した将来展望を検討すべき」と提言
  • 3市町の水道職員をメンバーとする「広域水道事業在り方委員会及び専門部会」を設置し検討スタート
  • 「広域水道事業在り方委員会報告書」を策定。「広域化により運営基盤及び技術基盤の強化が図られ、今後の経営の安定化、効率化等に効果大」と報告。
  • 旧企業団、3市町水道事業において、将来の統合を確認
  • 「岩手中部水道広域化基本構想」策定。旧企業団および3市町とで「岩手中部地域水道事業の統合に関する覚書」締結
  • 「岩手中部水道広域化事業計画」策定、岩手中部広域水道企業団内に「水道広域化統合準備室」設置
  • 学識経験者と構成市町の地域住民で構成する「岩手中部水道料金検討委員会」開催。統合水道料金体系は「口径別・基本水量なし・逓増型従量料金」が望ましいという委員会報告書提出。
  • 構成市町の各地域において住民説明会を開催(計59カ所、のべ795人参加)
  • 岩手中部水道企業団の設置について構成市町議会で議決
  • 「岩手中部地域水道事業の統合に関する協定」締結。新企業団の設置が岩手県知事から許可
  • 新企業団議会において、水道料金等の条例及び平成26年度予算議決

「岩手中部水道広域化基本構想」を策定する際には、業務目標分析、アセットマネジメントや長期財務シミュレーションを取り入れ、長期の更新投資及び耐震化等を計画に盛り込みました。

広域化する際には、安定的で十分な水量のある水源を有効活用し、不安定で水量の少ない水源は廃止しました。ダウンサイジングによって経営の効率化を図り、大量に発生する老朽施設への更新投資を行います。

またスケールメリットを活かし、技術の継承も行える体制も整えました。新企業団は非常勤等含め約1000人の体制でスタートし、技術の継承も図っています。

安定かつ安全な水道事業を維持するためには、さまざまな経営改革が必要で、広域化もその1つと言えます。重要なのは将来を見据えた視点です。こうした動きは、自治体(水道事業体)によって差があります。もっとも避けたいのはAKB(「あきらめる」「考えない」「場当たり的」)な対応で、とくに将来の計画もなしに、「場当たり的」に値上げだけが行われるのは最悪です。

 


 

 

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