週刊「水」ニュース・レポート    2014年11月13日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「グリーン・イノベーションEXPO『地方自治と水道シンポジウム』」

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

11月12日から東京・お台場の国際展示場にて「グリーン・イノベーションEXPO」が開催されました。

そのなかで「地方自治と水道シンポジウム」が開かれました。地方の水道が、人口減少、給水量の減少、更新費用の増大などから持続的な経営が不可能になっていることは、本レポートでも何回か取り上げています。シンポジウムでは、東京大学大学院工学系研究科の滝沢智教授の基調講演を皮切りに、東北・関東で実際に進められている事例が発表されました。

 

〔ケース1  群馬県太田市及び群馬東部地区〕

太田市及び群馬東部地区の3市5町がそれぞれ単独で水道事業を営んだ場合、給水人口の減少などから事業は赤字転換します。(※太田市・平成34年から赤字、館林市・平成34年から赤字、みどり市・平成29年から赤字、板倉町・平成25年から赤字、明和町・平成28年から赤字、千代田町・平成28年から赤字、大泉町・平成28年から赤字、邑楽町・平成28年から赤字)。そこで水道事業を3市5町で統合を図っていきます。その後、人口減少にともない不要となった浄水場を閉鎖していく予定です。経営基盤を広域化し、施設を集約することでコスト削減し、老朽化した水道管を更新しても、平成36年までは黒字を維持できます。大隅良也群馬県太田市上下水道局長は、「研究業務に対する補助」「中小水道事業体へのサポート体制の確立」「統合を進めるために長期間現場に密着するアドバイザー制度」が必要と訴えました。

 

〔ケース2  宮城県山元町〕

東日本大震災により人口が25%減少。約38億円あった水道事業の収益は24億円に減少しました。そこで以前から関係のあった横浜市が手を差し伸べました。横浜市には横浜ウォーターという民間企業があります。横浜市と横浜ウォーターが連携し、山元町の水道事業をサポートしています。大都市のノウハウが山元町の震災復興を支えたというケースでした。しかし、まだ課題は残っています。震災で被害を受けた浄水場や管路などの施設は元通りになりましたが、将来の財政計画などはこれからの課題となっています。

 

〔ケース3  青森県北奥羽地区〕

この地区では昭和41年から水道事業の広域化方策が検討されてきました。単独で水道事業を行えなくなった自治体が早くから連携しており、共同化のメニューが確立されています。榎本善光・八戸圏域水道企業団副企業長によると、共同化するものは4つあります。それは「施設・水源の共同化」「水質データ管理の共同化」「施設管理の共同化」「システムの共同化」です。水質データ管理、施設管理は共同化したのち民間に委託するという方針です。さらに共同化ののち、企業団に委託し、最終的には企業統合を図るというシナリオです。

 

〔ケース4  岩手県矢巾町〕

吉岡律司岩手県矢巾町上下水道課係長が、水道行政における住民参加について話しました。水道政策を実効的にするには住民の理解が不可欠ですが、現実的には、水道に対する関心が薄れています。水道のない時代を経験している人であれば、水道のありがたさを訴えれば響きますが、現在の市民の多くは生まれたときから水道のあった世代で、蛇口をひねれば当たり前のように水が出てきます。関心の多くは「水道をもっとおいしく」「水道料金を安く」です。

矢巾町は、2段階の広報戦略を立てました。1つは水道の現状を知らせる冊子をマンガでつくりました。行政がつくるマンガにしてはかなりポップな内容です。

 

さらには市民参画(水道サポーター)のワークショップを行い、水道の現状と課題について丁寧に共有していきました。KJ法やファシリテーション・グラフィックなどの手法をつかって参加者の考えを丁寧に見える化していきました。その結果、「水道を維持するためには水道料金を上げる必要がある」という意見が市民から出ました。水道事業者と市民とのコミュニケーションのあり方としては、お手本となるような事例でした。

中小水道事業者の多くは、将来の危機を感じながらも、「どうしていいかわからない」ことが多いようです。しかし、現状を首長、議員、市民と共有し、早めに動く必要があります。この4つの事例はいずれも参考になるものです。

 


 

 

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