週刊「水」ニュース・レポート    2014年12月31日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「やはば水道サポーターワークショップ  ここでは市民が水道の未来を決める」(中編)
  • (アクアスフィア  橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

「やはば水道サポーター」は、水道に関して意識のない町民の声を水道に反映させる目的で生まれたものですが、サポーター制度が単独に存在するわけではありません。町民の声を水道に反映させるしくみは、「パブリックコメント」「アウトリーチ」「やはば水道サポーター」と重層的につくられています。

じつはここに「発言しないマジョリティ」の声を水道事業に反映させようという「想い」が感じられます。それぞれについて簡単に説明します。

◉パブリックコメント・・・矢巾町の水道事業には、水道のパブリックコメント手続きに関する要綱があります。これによって町民が水道事業に参加することを担保しています。

◉アウトリーチ・・・聞取り調査です。水道の職員が町へ出て、水道に対する意見を聞き取り、カードに記入します。ショッピングセンターなどで水道に対する意見を求めたところ、1000人のうち954人が何の躊躇もなく答えてくれました。「多くの人が水道に関心がないのではなく、意識が向いていないだけと感じた」(矢巾町水道課吉岡さん)そうです。アウトリーチで住民から出てきた意見は次のようなものでした。

 

  • 水道料金が高い
  • 水道水は塩素臭い
  • もっと料金が安くならないのか
  • 飲む水はスーパーのイオン水
  • おいしくない

町民の関心事は水道水の料金と質です。水道事業者は、水道管や浄水場など膨大なストック管理の大変さを伝えたいのですが、住民の関心とは大きな隔たりがあるとがわかりました。

◉やはば水道サポーター・・・一般公募(有償)で集められ、定期的に水道について学びながら、矢巾町の水道の将来を考えています。

 

初年度(2008年度)の公募で集まったのは7人。この7人で月1回のワークショップを開き、水道事業の諸問題の共有を図っていきました。最初は、自由に意見・苦情を言ってもらい、KJ法でとりまとめました。個々の意見を紙に1つずつ書き出し、小さなグループにまとめた後、さらにそれを中グループ、大グループに分類していきました。

翌年(2009年度)集まった11名のうち、水道に関心があった人は1人でした。「時間に余裕があるから手をあげてみよう」というノリの人がほとんどでした。水道に関してはまったくの素人集団。なかには子ども連れのお母さんもいて、お菓子を食べたり、おしゃべりをしたりしながら、水道について学んでいきました。映像資料を見たり、水道水とミネラルウォーターの飲み比べをしたり、浄水場などの施設見学をしたり。

その後も毎年サポーターが公募で集められ、現在に至っています。もうすでにお気づきかもしれませんが、このサポーターとは個人の学びの場ではなく、学習する組織になっています。そして年度ごとに構成メンバーが増え、学びも深くなっていきます。

学びが深まると深刻なテーマをあつかえるようになります。

戦後から高度成長期に整備された全国の水道設備が老朽化し、一斉に更新期を迎えていること、簡易水道を維持するため住民に設備補修費の一部負担を求めるケースがあることなどを学びながら、矢巾町の水道事業の持続性、将来の在るべき姿を探っていきました。

時間をかけて学んでいるうちに、サポーターは成長し、水道に対する意識が変わっていきました。

 

  • 「水道は利用できて当たり前と感じていたが、今回参加して料金の根拠など多くのことを学んだ」
  • 「水道に携わる人の苦労を知った。今後はもっと大切に使いたい」
  • 「水道事業を持続させるには適正な投資が必要であり、水道料金の多少の値上げもやむなしだ」

水道サポーターは、水道事業のあるべき姿を示す「水道ビジョンづくり」に携わり、それを普及啓発するための漫画も作成しました。

矢巾町の水の精「じゃじゃっと君」が中学2年の男子と水道管や浄水場を探検し、悪者を倒しながら「水道の仕組み」「水道施設の維持」「人口減少」「経営管理力の低下」など水道事業を取り巻く課題がわかりやすく紹介されています。

 

漫画を掲載した小冊子は、約50ページで1万3000部作成され、検針票と一緒に各戸に配布されるほか、町内のコンビニでも無料配布されています。

矢巾町のしくみの特徴は「発言しないマジョリティ」の声を反映させることに腐心していることでしょう。住民参加は今後の自治体にとってとても重要なキーワードですが、ともするとそれ自体が目的化していることが多く、議会対策になっていることもあります。

住民でつくられた組織が「声の大きなマイノリティ」であることもあります。意識が高く、専門知識もありますが、住民全体の代表ではありません。その人たちが住民をリードすることもありますが、場合によっては引っ掻き回しているだけだったり、役所と対立してしまうこともあります。こうなると「声の大きなマイノリティ」は役所とも多くの住民とも乖離していきます。

「発言しないマジョリティ」の声をいかに聞くか。これは自治体の政策だけに止まらず、国政にも言えることでしょう。パブコメ、聞き取り、学習する組織づくり。参考になる点はとても多いと思います。(1月7日の後編に続く)

 


 

 

【その他の「水」ニュース】