週刊「水」ニュース・レポート    2015年1月7日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「やはば水道サポーターワークショップ ここでは市民が水道の未来を決める」(後編)
  • (アクアスフィア  橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

「やはば水道サポーター」の会議に出席して感心したのは、話し合いがきちんとした予測データに基づいていることでした。

話し合いの前提として、「人口減少」「水需要増減」「施設能力」「配水池の整備状況」などが共有されています。

たとえば人口減少については「高齢化や子育て世代の減少(少子化)にともない、人口は緩やかに減少。平成24年に26,819人が20年後の平成44年には24,668人と推計」されています。

こうした前提に立ち、中長期的な視点(約40年)で描いた施設整備のあり方を検討します。

水道事業は、水道施設の維持管理や整備など、経営に必要な費用の大部分を水道利用者の支払う水道料金で賄う「独立採算制」の下で運営されています。

その会計方法は2本立てで、水道水を供給するする日常的な事業の収支(収益的収支)と、浄水場や管路の整備などに当てる事業の収支(資本的収支)に分かれます。矢巾町の場合、収益的収支が黒字であり、その蓄積である内部留保を、施設を作るための費用に当てています。借金(企業債)はなく、極めて健全な財政状況を維持しています。

これは全国の水道事業者でも珍しいケースでしょう。

多くの水道事業者は、給水人口減少などから収益的収支が赤字傾向にあり、さらに施設をつくるために借金(企業債)をしているため経営は非常に苦しくなっています。ある日突然、何の説明もなく水道料金の値上げが発表されるケースが数年前から続いていますが、それはこうしたにっちもさっちもいかない状況に打ち手がなくなり、開き直ったという見方もできます。

矢巾町の水道は、現在とても健全な財政状況にあるといえますが、中長期的な視点で見た場合、課題はあります。大きくいえば2つ。1つは、人口が減少し収益的収支の黒字を続けることがむずかしいこと、もう1つは、老朽化した水道管の更新の費用が発生し資本的収支の支出が増えること。簡単にいえば収入は減るが、支出は増えるという状況です。

そこでまず施設や水道管路の老朽度を資産します。水道管路には法定耐用年数を超えたものもあり、延命措置を図ってはいますが、やはり順次更新していかなくてはなりません。更新をぎりぎりまで先送りすると次の世代の負担は大きくなります。次第に人口が減っていくことから、更新にかかる費用は同じでも1人ひとりが背負う金額は増えていきます。

こうした状況を考え、「やはば水道サポーター」の会議では、「いまから多少の水道料金が上がるのはしかたない」「冷蔵庫の買い替えにそなえて貯金しておくのと似ている」という声が上がっていました。次世代の負担を軽減するために、現在から「保険的投資」を行っていこうという意見です。そして、こうした声が町の水道事業に反映されていきます。

岩手県矢巾町では、このように水道事業の状況を丁寧に学び、具体的なデータを見ながら中長期的視点で検討した結果、市民は未来志向の決断をしていきます。

もちろん矢巾町の水道事業が経営努力の結果、黒字であることも、住民との対話がしやすい一因だとは思います。

しかしながら事業が黒字であれ赤字であれ、市民に状況をきちんと伝えることは、どの水道事業者にも必要なことです。もしかすると、皆さんの住む町の水道が大変な状況になっていることを知り、驚きや怒りに震えるかもしれません。

でも、そのときできるのは、逃げるか受け入れるかです。引っ越すのがいやであれば、参画意識をもって、これからどうするかを冷静に考え賢明な判断をしなくてはならないでしょう。

 


 

 

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