週刊「水」ニュース・レポート    2015年2月4日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「第3回公開シンポジウム『変化する世界の水問題解決に向けたCREST水利用プロジェクトの挑戦』」
  • (アクアスフィア  橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

1月28日、東京ビッグサイトにおいて、第3回公開シンポジウム「変化する世界の水問題解決に向けたCREST水利用プロジェクトの挑戦」が開かれました。

CRESTというのは、国が定める戦略目標の達成に向けて、独創的で国際的に高い水準の課題達成型基礎研究を行い、今後の科学技術イノベーションに大きく寄与する卓越した成果の創出を目指すネットワーク型研究(チーム型)です。水に関するプロジェクトは、「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」研究領域にカテゴライズされており、現在16チーム、約600人が研究を推進しています。

膜処理技術、都市の水利用、農業用水利用など幅広い分野の研究課題で構成され、国内外さまざまな水利用に関わる課題解決に向け、研究活動を行っています。特徴的なのは、実社会や産業界で役に立ちそうな研究の多いことです。

 

1月28日は、6つの事業の経過報告がありました。(以下、内容については上記「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」HPより引用)

 

 

  • 「安全で持続可能な水利用のための放射性物質移流拡散シミュレータの開発」(沖大幹  東京大学生産技術研究所 教授)
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    • 2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一発電所の事故により大量の放射性物質が環境中に放出されました。一部は大気中の移流拡散過程を通じて広域に広がり、河川等に流出し、水道水源に到達して浄水から放射性物質が検出されました。また、食品からも放射性物質が検出されました。
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    • このような事故は二度とあってはならないことですが、不測の事態に対する準備を怠らないことも大切です。持続可能な水利用のためには、人類が利用しようとする水源の水が利用に適しているかどうかを的確に診断予測する技術が不可欠といえます。本研究では、ヨウ素131 やセシウム137 等の放射性物質が大気の流れによって移動し、雨などに伴って地表面に降下し、土砂等とともに水の流れに沿って川を流下して、どういうタイミングでどの程度の濃度で水道取水源に到達するかを推計できるシミュレータを構築します。また、飲食物中の放射性物質濃度と農作物の産地情報、平均的な摂取量から、飲食物由来の被曝量を推定します。
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    • この研究により、一時的な取水停止や積極的な水処理の実施など臨機応変な対応によって安全な水質が確保されるようになり、安全で安心な水利用の実現に貢献することが期待できます。さらに降水や土壌、流水の中の放射性物質濃度観測値等をどの程度再現できるかという研究を通じて、化学物質の大気中、水圏中の循環に関する理解を確認し、必要に応じて修正、改良することが可能となるなど、科学技術・学術の推進にも役立つことが期待されます。また、飲食物由来の被曝量の推計結果は、今後、緊急時における規制値を定める際に役立つ資料となることも期待できます。
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  • 「良質で安全な水の持続的な供給を実現するための山体地下水資源開発技術の構築」(小杉賢一朗  京都大学大学院 准教授)
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    • 気候変動等によるリスクが高まる中、良質で安全な水の持続的な供給を実現するためには、本来の自然の力を活かした、汚染や災害に強い水資源開発を行うことが重要です。この研究では、今後の開発が期待される水資源として、河川源流域における山体地下水に着目しました。日本の山地は地形が急峻であり、従来から水資源開発は難しいと考えられてきましたが、最新の水文研究によって、降水の多くが山体基岩内に浸透し、地形が急峻な山体ほど大量の地下水を有している可能性が示されています。
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    • 良質で安全な水供給を持続させるためには、互いに独立した涵養域を持つ取水源を多数開発することで水資源の多様性を確保し、リスクを分散することが必要になりますが、源流域の山体地下水開発は正にこの要件を満たしています。同時に山体地下水は、元々の水質が良好であり、人間の生産活動の影響を受けにくく涵養域の汚染状況の把握が容易など、水質事故に強い水資源でもあります。また、急峻な地形を活かした取水が行えるので、大規模な構造物が不要であり、災害時の電力不足に強く、省エネルギーにも役立ちます。さらに取水による水位低下の結果、気候変動により集中豪雨が増加した場合でも、過剰な雨水が地下水賦存量回復に充てられ洪水が軽減されます。水位低下は山体斜面の深層崩壊防止にも効果的であり、人的被害や水道施設の破損、水源地の荒廃を抑制します。このように山体地下水の利用は、災害の軽減や国土の保全にも役立つというwin−winの関係をもたらすと期待されます。
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    • この研究では、観測が容易な山地河川流出水に着目し、その水量や水質のシグナルを的確に解析する手法を検討することで、山体地下水の賦存・流動状況を把握する手法を開発します。この手法を、最新のリモートセンシング・物理探査手法と効果的に組合わせることによって、水資源開発に適した山体地下水帯を効率よく探査・開発するための革新的な技術の構築を目指します。この技術によって、国土の73%を占める山地の山体を天然のダムとして活用し、水資源の多様性を確保することで良質・安全な水の持続的供給を実現すると同時に、洪水・土砂災害の軽減を図ることが期待できます。
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  • 「迅速・高精度・網羅的な病原微生物検出による水監視システムの開発」(大村達夫  東北大学未来科学技術共同研究センター 教授)
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    • 水循環系を媒介とする感染症リスクの拡大防止策は脆弱であり、安全で安心な水利用を期待する人々に社会的不安をもたらしています。この研究では、毎年560万人にのぼる感染性胃腸炎患者数を低減する新しい水監視システムの構築を目指します。下水中の病原微生物を迅速・高精度・網羅的に検出する技術を新たに開発し、その技術を用いて都市下水を継続的に監視することで、感染症発生後速やかに社会に情報を発信することが可能となります。これにより、感染が拡大する前に感染拡大防止策をとれるため、感染拡大を大幅に抑制することが期待されます。
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  • 「地域水循環機構を踏まえた地下水持続利用システムの構築」(嶋田純  熊本大学大学院・自然科学研究科 教授)
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    • 地球温暖化に伴う降水量変動の増大や急速な人口増加によって、地球規模で水資源は不足しています。豪雨や干ばつなどによって地表水の流量は大きく変化するが、地下水は貯留量が大きく滞留時間が長いため、相対的に安定した水資源として注目されています。我が国は温帯湿潤気候に属して降水量が多く、山が海に近くて流域の起伏が大きいため、流域に降る雨が海まで流出する時間が早く、水循環は極めて活発です。これまでは相対的に容易に取水できる地表水がよく利用されていましたが、最近では供給が安定している地下水資源の利用に関心がでてきています。我が国のような水文気候条件下では、地下水の利用量が涵養量を超えないように適切に管理すれば、地下水の持続的な利用は可能です。
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    • この研究では、この地下水資源の持続的利用に必要な技術として水量と水質両面からの研究開発を展開します。水量把握に関しては、地下水の帯水層構造を把握するための周波数変換方式の電気探査の開発や、地下水の年齢を推定するための若い年代トレーサーなどの新しい技術開発を行います。日本を始めとして世界各地の地下水は農業用肥料の過剰施肥や畜産廃棄物に起因する硝酸性窒素汚染、一般廃棄物や産業廃棄物処分場等からの有害物質の流出など、問題が山積している。そこで、地下水汚染の発生機構とその変動プロセスを調査して、地下水汚染を防いだり、汚染された地下水の水質を改善したりする必要がある.そのため、硝酸性窒素や自然由来の有害物質などを汚染源で水質負荷を軽減する技術や、帯水層中で汚染物質を除去する技術、揚水後に水質を改善する簡便で実用的な浄化装置などの開発を行います。さらに、地下水を利用している人々にも水質汚染の実態が一目で分かるように、特定物質の水質が悪化すると赤色に変わるメダカなど、新しい生物モニタリング手法の開発を行います。
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  • 「超節水精密農業技術の開発」(澁澤栄  東京農工大学 大学院農学研究院 教授)
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    • 乾燥地で利用可能な高効率水利用の植物工場システムの設計をめざします。そのための技術要素は、㈰作物吸水ニーズに基づく水利用効率を最大化する灌水技術、㈪植物工場稼働のための省エネルギー水利用システム、㈫雨水・地下水・使用水を浄化・再生処理し貯留する高効率水管理システム技術です。
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    • 作物吸水ニーズに対応した灌水技術では、作物吸水量のリアルタイム計測技術と作物生理状態のリアルタイム観察技術および音波による浅層土壌水分の探査技術を開発します。省エネルギー水利用システムでは、最適給配水制御システムと省エネルギー施設空調システム技術および環境調節の最適制御技術を開発します。そして、高効率水管理システム技術では、作物吸水ニーズ対応型灌水制御システムと水の再生・循環利用のための浄化技術および精密農業による節水栽培管理システムを開発します。
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  • 「モデルベースによる水循環系スマート水質モニタリング網構築技術の開発」(東京大学  大学院工学系研究科 教授)
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    • 持続可能な水利用のためには、地域ニーズ・特色に合わせた水質の確保や無駄のない水の利用、例えば近隣地域間の水の相互融通利用や、井戸水など水資源の有効活用など、地域に密着したきめ細かい水利用技術が望まれています。そのためには、水圏、上下水など水循環系全般にわたり、IT技術と連動させて地域ニーズ・特色に合わせた水質(塩素濃度や細菌数、窒素化合物など)をきめ細かくモニタリング・管理する水循環系におけるスマート水質モニタリング網が極めて有効です。水循環系スマート水質モニタリング網実現の要となるのは、屋外環境で多点に設置でき、用途・サイトに応じた適切な水質情報を無人で取得するためのコンパクトな水質モニタとシステムを開発します。

会場には200名以上の人が詰めかけ、報告を熱心に聞いていました。また途中、ポスターセッションも行われ、研究に携わっている人と直接質疑応答もできました。

 


 

 

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