週刊「水」ニュース・レポート    2015年2月11日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「映画『DAMNATION』(ダムネーション)」
  • (アクアスフィア  橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

この映画は、米国ではじまったダム撤去の動きをドキュメントしたものです。

米国の総ダム数は約7万5000基ですが、2014年には72基が撤去されました。ダムの主な目的は、利水、治水、発電ですが、その役目を果たす必要がなくなったり、老朽化などの原因によって役目を果たせなくなったダムが撤去されます。

撤去されると、さまざまなメリットがあります。ダムの跡地には自然が蘇っていきます。また、ダム湖にたまっていた土砂が流れ、海まで辿りつきます。すると削られていた海岸線が回復します。

 

 

  • 上映館の情報もありますが、映像がレンタルされていて市民が自主上映会を企画することもできます。
  • http://damnationfilm.net/screen/

僕は映画を見ながら、日本のダム事情を考えていました。

日本のダムは約2700基あります。ただ米国とはダムの定義が違います。米国では1メートル以上の構造物をダムというのに対し、日本では15メートル以上をダムといいます。米国の15メートル以上の構造物は約8000基あり、国土の面積で比べると、日本にはかなり多くのダムがあることがわかります。

このなかに役割を終えたダム、役割を果たせなくなったダムが増えてきています。

人口減少したり工場が海外に移転したりして、必要なくなった利水目的のダム。ダム湖に土砂がたまり、機能を十分に果たせなくなった治水ダム。さらにはコンクリート建造物であるがゆえに、朽ちるという宿命をもっています。こうしたダムは撤去しなくてはなりません。

じつはダム撤去は地方再生につながります。

ダム建造は公共事業であり、土建業者だけが儲かる景気浮揚策と評判が悪いのですが、ダム撤去も公共事業であり土建業者にお金が入ります。土建業者にも土建業者に支えられる政治家にとっても悪い話ではありません。

そして、土建業者以外にもメリットがあるのがダム撤去のよいところです。

とくに生態系にはよい影響をもたらします。日本のダム撤去の事例というと、熊本県の荒瀬ダムが有名ですが、ここでは川に天然の鮎や海老が戻り、海苔の生育もよくなったと報告されています。ダム湖に貯まっていた栄養豊富な土砂が流域を豊かにしてくれます。

欧米では「ダム不要」という動きは1980年くらいから目立って増えて来ています。環境保護団体の主張だけではなく、国策としてダム建設を取りやめたり、ダムを撤去する例が増えているのです。

1990年代にアメリカの水源開発を受け持つ内務省開墾局の総裁だったD・ビアードは、「アメリカにおけるダム開発の時代は終わった」と宣言しました。その理由として、ダムによって得られる利益よりも、建設コストが高くつきすぎること、水の需要が減ったこと、堆砂の処理などダム運営コストが高くつくようになったこと、環境に悪影響をおよぼすことなどをあげています。

日本ではダム建設賛成・反対という議論がほとんどですが、一歩先行くダム撤去という流れを、『ダムネーション』で確認してください。

 


 

 

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