週刊「水」ニュース・レポート    2015年2月18日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「『地下水保全法』早ければ年内に施行」
  • (アクアスフィア  橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

昨年12月24日の「水」ニュース・レポートで、「来年は日本の地下水法元年になる」と書いたのですが、いよいよ現実味をおびてきました。超党派でつくる水制度改革議員連盟は、今国会(第189回国会:1月26日〜6月24日)に「地下水の保全、涵養及び利用に関する法律」(「地下水保全法」)案を提出します。

法案は有識者からなる水循環基本法フォローアップ委員会(座長・高橋裕東京大学名誉教授)で起草され、昨日(2月17日)、水議連の石原伸晃代表に上申されました。

何度かこのレポートでもお伝えしましたが、これまで地下水には明確なルールがありませんでした。民法には「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」という規定があり、土地所有者に地下にある地下水の利用権があると解釈できます。

しかし、地下水は地面の下に止まっているものではありません。複雑に絡み合いながら立体的に地下を流れています。

近年、外国資本による土地の取得が増えて、水源での水の利用が心配されていたり、企業の自前井戸利用が増加したり、森林の荒廃、水田の減少、都市化などから涵養域が減少したり、過剰な施肥や家畜屎尿の未処置による汚染もあったりと、地下水の持続性に黄色信号がともっていたことから、地下水に関する新たな法案策定が求められていました。

「地下水保全法」の目的は、

 

  • 地下水の質と量の保全
  • 涵養(地表から水を地下に浸透させ地下水量を増やすこと)
  • 利用の方法

について定め、国、地方公共団体、事業者、国民、土地所有者、それぞれの責任を示し、健全な水循環を維持することにあります。

昨年施行された水循環基本法では、国、地方公共団体、事業者、国民の責務が規定されているものの、土地所有者の責務は規定されていませんでした。しかし、国土の所有が国外化している実態に照らし、土地所有者の責務が規定されています。

地下水の位置づけはどうなったでしょう。地下水は、地表水と一体的に水循環の基礎を構成する「国民共有の貴重な財産」とされています。そして、保全、涵養、利用などのマネジメントを地下水域を基本単位として行うこととされています。

管理主体である「地下水保全団体」は基本的には都道府県が担うこととされていますが、地下水域が2つ以上の都府県にまたがる場合は、関係都府県が共同して、その権限を行使します。また地域の状況に応じて、市町村が地下水に関する計画、保全・涵養活動を行うこともできます。

地下水保全団体は、保全・涵養・利用に関する基本計画を策定し、実施します。

その際、必要に応じて地下水利用を許可制としたり、保全・涵養事業の財源として地下水採取の許可を受けたものから負担金を徴収できます。また、地下水保全特別区域を指定し、採取の禁止や制限も可能です。

土地の移動に伴う地下水汲上げの権利の移動については、土地売買契約の30日前に、当事者の氏名、土地の所在、面積、土地の利用目的などを届けなければならなくなります。

また、水質については、いったん汚染されると回復が困難であることから、人の健康に悪影響を及ぼす可能性のある汚染物質からは「予防的な取組により対応」するという画期的な記載があります。

また、地下水保全団体の長は、人命や自然生態系に著しい影響を及ぼす恐れのある地下水障害を防止するため、地下水障害や揚水機を設置した土地所有者に対し、原状回復や再発防止措置を命じることができ、命令に違反したものは、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。

仮に今国会で成立すれば、年内に地下水保全法が施行されます。

地下水に課題をかかえる自治体の動きが加速するでしょう。とくに地下水の利用・保全・涵養などは調査が基本になります。動き出していない自治体は驚いてるのではないかと思います。

ただ、最初から完璧な活動をするのは無理なので、まずが地域の地下水を、地域で行政・企業・市民団体などが協働して保全・涵養・利用していこうというルールであることを共有することが肝心です。決して、使いすぎや汚染の犯人探しをするのではなく、地域の水を50年、100年先に残し、持続的な活動ができるよう、前向きにとらえて動き出すことです。

 


 

 

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