週刊「水」ニュース・レポート    2015年9月10日号

 

 

 

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シンガポール政府が、第4の海水淡水化施設建設計画を発表したのを受け、ハイフラックス(シンガポールの水処理施設開発・運営大手)がプロジェクトへの応札の検討をはじめました。

この施設は、シンガポールの中央商業地区の東部にある埋め立て地、マリーナ・イーストに建設され、1日に13万6000立方メートルを処理できます。

シンガポールは現在、1日当たり110万立方メートルの水をマレーシアから輸入していますが、この契約は61年に失効します。シンガポール政府は、水の完全自給を目指し、貯水池の増設や、海水淡水化施設、下水再生施設などの整備に取り組んできました。

シンガポールの国土は狭く平坦で水の確保が難しい国です。その一方、経済成長とともに水の需要は増加しました。水の需要は現在1日180万立方メートルですが、60年には倍増することが見込まれています。

一方のマレーシアの降水量は年間約2400ミリ。これは世界の平均降水量である970ミリの2倍以上です。マレーシア政府は豊かな水資源を国の発展に活かすことを考えており、シンガポールへの水供給はその1つでした。

シンガポールは水をマレーシアから調達してきたましたが、2000年の値上げ要請を機に、輸入から自給に舵を切りました。造水を国家戦略に掲げ、水の自給率向上に動き始めたのです。

2003年、経済再生委員会(ERC)勧告により奨励産業の拡充が図られ、そのなかで「シンガポールは世界の水のハブとなり、2018年までに世界の水関連産業の3〜5%を占める」ことが目標として打ち出されました。

続く2004年には、水資源を統括管理する公益事業庁(PUB)を設立し、産学官の交流施設を整備、国内外からの研究開発機関の集積を開始しました。2006年には「水環境技術を主要産業の一つと位置付け、5年間で3億3000万シンガポールドル(約200億円)の投資」を発表しています。

造水の核となるのがニューウォーター事業です。

下水や海水を、MF膜(微細な穴のあいた浄水用の膜フィルター)、RO膜(さらに微細な穴のあいた浄水用の膜フィルター)、紫外線殺菌の3工程を経て飲料水レベルまで水質改善するというもので、もともとは工業用水として利用する予定でした。

しかし、水質を調べると世界保健機関(WHO)の定めた基準、より厳しいアメリカの飲料水基準を上回る水質で、それまでシンガポールで供給されていた水道水よりも不純物が少なく、飲用に適していることがわかりました。

水資源を持たないシンガポールですが、この技術によって、水の自給率は向上しています。シンガポール政府は、水の完全自給を目指し、貯水池の増設や、海水淡水化施設、下水再生施設などの整備に取り組んできました。政府は海水淡水化や再処理された水の供給を、現在の55%から60年までに80%に引き上げる計画です。

こうした造水事業は、結果として自国の企業を育てました。国策として水処理産業を育成したため、有力なプラント会社が数多くあります。ハイフラックス、ダイエン・エンバイロメンタル、セムコープ・インダストリーズ、ケッペル・コープ、ユナイテッド・エンジニアなどです。

国がインフラ事業を海外企業へ門戸を開けたことで、世界の水処理企業が集結し、結果、現地企業の競争力強化にもつながり、付加価値のある輸出事業に成長したのです。

シンガポールの企業は、こうした経験や実績を水不足や水供給が課題の中東やアジア諸国に提供しています。その存在感は世界に広まり「世界の水のハブとなり、2018年までに世界の水関連産業の3〜5%を占める」という目標は決して夢ではありません。

 


 

 

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