週刊「水」ニュース・レポート    2015年11月5日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

  • 「緩速ろ過は持続可能な水道技術〜『第11回 緩速ろ過/生物浄化法セミナーin盛岡』〜」
  • (アクアスフィア  橋本淳司)

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

2015年10月5日、6日、特定非営利活動法人地域水道支援センター主催の「第11回 緩速ろ過/生物浄化法セミナーin盛岡」が、盛岡市上下水道局の協力の元、開催されました。

緩速ろ過とは何か?  これは生物群集の働きで水を浄化する技術です。この「水道シフトをおこそう!  震災を機に見なおされる生物浄化法」を見ると、その概要がわかりますよ。

 

さて5日は、いわて県民情報交流センター「アイーナ」にてセミナー、質疑応答、討議が行われ、6日は盛岡市上下水道局米内浄水、大慈清水・まちづくり塾(盛岡市鉈屋町)などの視察を行いました。

1日目のセミナーでは、6人が水道事業や緩速ろ過についての最新の知見を発表しました。

 

  • 「東日本大震災の緊急救援活動と災害対応体制づくり」盛岡市上下水道局 上下水道部 山路聡氏

    東日本大震災発生直後、盛岡市の浄水場では停電、断水した。復興に向けて以下の3点を重要課題と考えている。

 

  • 水源被害のリスク分散を図る
    被災したすべての水源は浅井戸であり、地表面からの影響を受けやすい。特に、竹駒第一水源地は多量の降雨後に水質が安定しない傾向にある。被災しなかった地域に、新たな井戸水源を確保することが理想的である。
  • 水源地の浸水対策(津波対策)
    水源応急復旧に長期間を要した原因は、井戸内部及び機械・電気設備室への海水と漂流物の侵入であった。井戸に付属する機械・電気設備は、経験津波水位より高い位置に設置する必要がある。
  • 中央監視設備の整備
    中央監視設備を設置して、遠隔監視により効率的に運転管理を行う(平成24年2月完成)。

 

  • 「緩速ろ過処理法の実践と課題」盛岡市上下水道局 米内浄水場 富井健氏

    米内浄水場の原水は米内川の表流水で、緩速ろ過方式(9450㎥/日)と急速ろ過方式(23,000㎥/日)を組み合わせて浄水処理を行っている。緩速ろ過3池中、2〜3池を運用している。かきとりペースは以前の1か月に1回から2、3か月に1回に変更し、12月中旬から3月上旬にかけては行っていない。今後はベテラン職員の定年退職が相次ぐ予定で、若手職員への技術伝承や運転管理マニュアルの整備が急務である。
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  • 「施設更新に向けた緩速ろ過実証試験の概要」盛岡市上下水道局 米内浄水場 蛇口卓也氏

    盛岡市では持続可能な水道システムとして、緩速ろ過法の継承を行うとともに、緩速ろ過の安定化と効率化を図るために、未来型緩速ろ過システムを構築するための実験プラントを構築する。研究内容は以下6点である。

 

  • ろ過砂の違いによる処理効果の検証
  • 覆蓋による処理状況の検証
  • 溶存酸素量のコントロールによる処理状況の検証
  • LED照明による処理状況の検証
  • 水深の変化による処理状況の検証
  • 前処理(粗ろ過)による濁度低減化検証

 

  • 「緩速ろ過(生物浄化法)の世界的動向」地域水道支援センター理事 中本信忠氏

    緩速ろ過法はその名称から誤解されている部分が多い。一般的にはろ過速度は「ゆっくり」とされているが、テムズ水道は9.6m/dにろ過速度を上げると水質がよくなった。酸素不足が解消され、生物群集が活躍するようになったためである。また、濁度に弱いとされるが、上向き粗ろ過で前処理することによって対応可能。砂は生物群集のすむ場所なので、目詰まりしないよう粗い砂がよい。フィジー政府はEPS(Ecological Purification System)による共同水栓方式で全国民に安全な水を供給する予定である。
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  • 「緩速ろ過の前処理(1)資源対策、凝集沈殿の処方」 地域水道支援センター会員・元広島県企業局 瀧田英生氏

    広島県の埜田浄水場では以下5つの課題に対し、以下の対応を行った。

 

  • PAC注入によるろ過閉塞→STIの導入により改善。余剰ろ過池を粗ろ過池に改造して無薬注で濁度処理を行った。
  • 捨て水対策→捨て水を着水井に返送
  • 処理水濁度0.2オーバー→過飽和酸素のマイクロバブルであって問題なし
  • 塩素消毒副生物→次亜鉛注入点を配水池流出管に変更
  • コンセッション→インハウスエンジニアの育成と組織体質の改善

 

  • 緩速ろ過の前処理(2)礫(れき)による粗ろ過の処方」地域水道支援センター常務理事 瀬野守史氏地域水道支援センター会員・元広島県企業局 瀧田英生氏

    緩速ろ過法には濁度に弱いという欠点があるが、上向式粗ろ過による前処理によって対応することができる。上向式粗ろ過は物理的な処理であると同時に生物的な処理も行われている。大分県豊後高田市や岡山県津山市では、この方法を活用した小規模な浄水装置が運転中である。

 

その後、緩速ろ過の前処理の、工夫維持管理の工夫について、質疑応答や討議が行われました。

2日目は、視察を行いました。盛岡市上下水道局米内浄水場は、1934年(昭和9年)完成の盛岡市最初の浄水場。緩速ろ過池をはじめとする緩速系施設は、場内にある水道記念館とともに、1999年(平成11年)に国の有形文化財に登録されています。急速ろ過から緩速ろ過へ変更するというプランをもっており、今後に注目です。

その後、平成の名水百選に選定されている大慈清水へ行きました。雛壇形式の箱で造られていて、上から順に飲み水、米研ぎ、洗い水、足洗いになっており、今でも生活用水として多くの人に利用されています。清水の共同利用管理組合、清水をまちづくりに生かすNPO活動について話を聞きました。

緩速ろ過は古い技術と捨て去られることが多いが、セミナーや視察から、まだまだ発展途上の技術であり、持続可能な社会のインフラとして重要な役割を果たすと考えます。

 

 


 

 

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