週刊「水」ニュース・レポート    2015年11月12日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

 

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

この2つのニュースを並べてみるとへんな感じがしませんか。

 

  • 大手飲料水メーカーが水道水をペットボトルに詰めて売り出す。(消費者は怒り!)
  • 水道局が水道水をペットボトルに詰めて売り出す。(消費者の反応薄い?)

まず、前者から考えてみたいと思います。

じつはペプシの「アクアフィーナ」やコカコーラの「ダサニ」が水道水であることはもう10年以上も前から繰り返し言われてきたことです。2006年に米国・天然資源保護協会が103ブランド・1000以上のサンプルを調査したところ25%が水道水、あるいは水道水にミネラルを添加した水でした。

そして、これは違法というわけではないので、その後、ペットボトルの中味が水道水から地下水などへ変わったわけではありません。中味は水道水のままです。今回の報道はメーカー側が認めたということです。

では、「それなら値下げしろ」という怒りについてはどうでしょうか。米国では水道水とペットボトル水の価格差は2000倍。とても大きな価格差ですが、「アクアフィーナ」や「ダサニ」が水道水をそのまま詰めて売っているかというとそうではなく、浄水などのコストがかかっています。日本でも水道水を原水とするペットボトル水や宅配水はあり(違法ではない)、水道水とそうした水との価格差は800倍程度あります。こちらも水道水をそのまま提供しているわけではなく、さまざまな浄水処理が行われています。

重要なのは、私たちが何に価値をおいて、水を選ぶかということでしょう。

まず第一段階は、消費者目線で、原料、製造プロセス、価格に注目します。

 

  • 水道水をそのまま飲むこと
  • 浄水されたペットボトル入り水道水を飲むこと
  • ペットボトル入り地下水を飲むこと

を安全性、味、料金などの要素で比較し、選ぶこと。

第二段階は、生活者目線でサスティナブルという観点で見直します。

 

  • 水道水をそのまま飲むこと
  • 浄水されたペットボトル入り水道水を飲むこと
  • ペットボトル入り地下水を飲むこと

を持続可能性を考えて選ぶこと。

たとえば、水源は保全されているか、製造から廃棄までにどれくらいのエネルギーがかかっているか、どれくらいのゴミが出ているかなどを考えて選ぶということです。

『USA Today』があらためてこの問題を取り上げた背景には、第二段階の視点の広がりがあり、ここ最近、米国ではゴミやエネルギー減らすなどの観点から、ペットボトル不買の動きが起きています。アメリカで1年間に製造されるペットボトルは、10万台の車が1年間に使うのと同じ量の石油が必要になります。水道水を飲むことによってペットボトルを減らそうということのようです。

たとえばサンフランシスコは、2020年までに埋め立てゴミゼロを目指し、2014年4月、ペットボトル飲料水の販売を公用地で禁じる新法を可決しました。一方で、米国飲料水協会は、「解決策のように見えて問題が生まれるだけだ。これだけリサイクルに熱心な市なのに、市議たちがやろうとしてることは見当違いも甚だしい」としています。

さて、こうしたことを考えながら、水道水をペットボトルに詰めて売る日本の自治体のことを考えてみましょう。

これを実施しているのは仙台だけではありません。東京都は、2004年から「東京水」の販売はじめました。この水は高度浄水処理水です。東京都は1992年からオゾンや生物活性炭を使い、カビ臭やアンモニア臭などを除去する「高度浄水処理」を導入しました。

しかし、水質が向上したことがあまり浸透せず、依然として「水道水はまずい」と言われ続けました。そこでペットボトルに詰めてPRすることにしました。ほかにも水道水をペットボトルで販売したり、PR用に使用している自治体は全国で100あまりあります。

この背景には水道事業が置かれている現状の厳しさがあります。給水人口の減少、節水社会への移行、企業が自前井戸から水を汲むなど、水道水の給水量は、1997年の約171億立方メートルをピークに減少に転じ、以来漸減を続けています。

一方、高度成長期に建設した水道施設が交換時期を迎え、各自治体は改修費の捻出に苦慮。料金を値上げせざるを得ないケースも増えると予想されています。水道の質に不満を持たれたままだと、値上げなど到底できないという懸念が、「安全でおいしい身近な水」の存在を知ってもらおうというPR作戦につながっているのです。

水道水をペットボトルに詰めて売るのは「おいしくて安い。だから水道を選んでほしい」という気持ちの表れなのです。つまり前述した第一段階に対する訴えなのです。

では、第二段階の視点があるかというとNOです。個人的にはペットボトルに詰めずに、「おいしくて安い。だから水道を選んでほしい」がPRできればといちばんよいと思います。

 


 

 

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