週刊「水」ニュース・レポート    2016年1月20日号

 

 

 

【今回厳選したニュース】

 

 


 

 

【ニュースを見る目】

 

今日は私の地元にある渡良瀬遊水地のニュースです。この遊水地は、茨城県古河市の北西に位置し、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県の4県にまたがり面積は33km2。2012年にラムサール条約の登録湿地になりました。

ニュースによると、足尾鉱毒事件と闘った田中正造に関する史跡と、渡良瀬遊水地が「日本遺産」に認定されるよう、関係自治体に働き掛ける市民団体が結成されることになりました。

そこでまず足尾鉱毒事件について振り返ります。

足尾銅山は、1610年の発見から1983年まで、400年近く続きました。1877年に古河市兵衛に経営が移ってから新しい大鉱脈が見つかり、富国強兵政策とあいまって銅の生産量が急速に伸び、20世紀初頭には日本の銅産出量の4分の1を担う大鉱山に成長しました。

当時の足尾は空前の好景気にわきましたが、やがて精製時に発生する亜硫酸ガスと鉱毒により、付近の環境は大きな被害を受けました。亜硫酸ガスによって足尾近辺の樹木は枯れ、山はハゲ山に。木を失い土壌を喪失した土地は次々と崩れました。

一方、鉱毒による被害はまず、渡良瀬川の鮎の大量死という形で現れました。次に、渡良瀬川から取水する田園や、洪水後、足尾から流れた土砂が堆積した田園で、稲が立ち枯れるという被害が続出しました。

怒った農民らが数度に渡り蜂起しました。前述の田中正造はこのときの農民運動の中心人物です。正造は帝国議会でこの問題を取り上げるとともに、鉱毒被害の救済に奔走。明治34年には議員を辞職し、明治天皇に直訴未遂事件を起こすなどしました。

その後も被害者とともに、政府の計画によって廃村の危機にあった谷中村に住みながら反対運動を続けました。農民の鉱毒反対運動が盛り上がると、1905年、政府は栃木県下都賀郡谷中村全域を買収し、鉱毒を沈殿する遊水池を作る計画を立てました。

これが現在の渡良瀬遊水池です。

ただし、これは、鉱毒反対運動の中心地だった谷中村を廃村にすることにより、運動の弱体化を狙ったものであると正造は指摘しています。

足尾鉱毒事件は公害問題の原点ともいわれます。

被害の範囲は広く、のちのちまで消えることはありませんでした。

範囲は、渡良瀬川流域だけにとどまらず、江戸川を経由し行徳方面、利根川を経由し霞ヶ浦方面まで拡大しました。そして、渡良瀬川から直接農業用水を取水していた群馬県山田郡毛里田村(現太田市毛里田)とその周辺では、大正期以降、逆に鉱毒被害が増加し、1971年に収穫された米からカドミウムが検出され出荷が停止されたほどです。

村もなくなり、人もなくなりました。

谷中村以外にも、足尾町に隣接する松木村が煙害のために廃村とり、同村に隣接する久蔵村、仁田元村も前後して廃村になりました。1899年の群馬栃木両県鉱毒事務所によると、鉱毒による死者・死産は推計で1064人とされます。

先週の土曜日に渡良瀬遊水池に行きました。

第一調整池はふだんから水がありますが、第二調整池、第三調整池は湿原になっています。ふだんは希少動物の住処ですが、渡良瀬遊水地は大雨などで川の水が急に増えたとき、その一部を貯めて下流に流れる量を少なくする役割を持っています。

昨年9月の豪雨災害の際は、大量の濁流が渡良瀬遊水地に流れ込みました。

ふだん湿原や草原、水面が広がる遊水地ですが、いったん洪水となると越流堤(堤防の一部が低くなっているところ)から河川水が流れ込み、利根川下流に流れる水量を少なくしています。現在の渡良瀬遊水地は、洪水から首都を守るという大切な役割を果たしています。

一方で昨年9月、遊水地近くでは浸水被害が広がりました。

栃木市西前原地区では、30戸のほとんどの家や農地が浸水し、発生から1週間後も、水が引かない状態が続きました。

渡良瀬遊水地があることで、周辺地域は、特殊な排水の方法をとっています。通常、周辺地域の川や排水路の水は、そのまま遊水地へと流れます。しかし、大雨などで、遊水地の水位が上昇すると、地域からの水が遊水地に流れなくなるため、ポンプで、強制的に排水してきました。

ところがポンプ室が浸水し、電気設備が漏電したことが原因で、遊水地の周辺にある6つの排水機場のうち、3か所が停止してしました。このために水があふれたのです。

こうした新たな災害リスクにどう向き合うか。遊水地周辺の栃木市、小山市などは、渡良瀬遊水地の排水機能の強化を国に求め、農林水産省は、2016年度からの対策工事の費用を概算要求に盛り込む方針です。

治水対策は水を完全に封じ込めるという方針から、あふれさせて減災するという方針に変わっています。ハード的な対応ではなく、ソフト的な対応が求められています。

 


 

 

【その他の「水」ニュース】