週刊「水」ニュース・レポート    2016年3月2日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

  • 「水道水のくみ置き方」
  • (アクアスフィア 橋本淳司)

 


震災直後、首都圏からペットボトル水が消えた。箱で買い占める人、購入制限をする店、空っぽになった棚を前に店員に詰め寄る人もいた。だが、ペットボトル水は被災地で大量に必要だった。被災地では水道が機能を失い、緊急給水を受けていた。被災した人は免疫力が低下しているため、やたらな水を飲むわけにもいかない。ペットボトル水は被災地に優先的に供給され、そうでない地域では品薄状態が続いた。

対策として浮上したのが水道水の備蓄である。

私たちは1日約250リットル程度の水道水を使っている。4人家族なら1トンというわけだ。

災害時には最小限の水で過ごさなくてはならない。

人間が生きていくのに1日に必要な飲み水は最低2リットルだが、被災すると乾燥した食べものが中心になるから水分が不足しがちになる(普段は食べものに含まれる水分を1リットル程度吸収している)。だから最低3リットルの飲み水が必要になる。

必要なのは飲用だけではない。それどころか飲用はごくわずか。1日250リットルのうち3リットルが飲用だとすると全体の1%にすぎず、残りの99%は風呂、シャワー、洗濯、トイレなどで、煮炊きに使われるわずかな水をのぞけば、すべて汚れを落とす水、衛生的に生活するために使う水なのだ。

だが、いつものようにじゃぶじゃぶと使えるわけではない。非常時には1日に飲用3リットル、衛生用10〜15リットルの水でなんとかしのぐ。支援活動が本格化するまでを3日と考えると、飲用9リットル、衛生用30〜45リットルの水を確保しなくてはならないことになる。

これを水道水のくみおきと風呂の残り湯でまかなう。

水道水でまかなうのは、飲用の9リットルと、口すすぎ、顔や手、体を拭くなどの水。大量の水を確保する場合には、水道水をポリタンクなど密閉できる容器に入れて保存する。一般的なポリタンクには20リットルの水が入る。

風呂の残り湯の量は各家庭で違うだろうが、浴槽は満杯時に200リットルの水が入るので、その4分の1の50リットルくらいは残っているのではないか。「風呂に水をためておく」。この習慣が阪神大震災での被災後についた人は多い。あの時も都市部で長期間断水し、トイレが流せないなど衛生面が悪化した。風呂の水は洗濯やトイレに使えば無駄にならず、いざという時の生活用水として利用できる。

このように、ポリタンクにくんだ水道水と風呂の残り湯で70リットルの水が確保できた。

もっと水をためておいたほうが安心だという人がいる。しかし、水は重く、自宅を離れなければならなくなったときに持ち歩くのはむずかしい。市販されている車輪のついたポリタンクを利用する手もあるが、個人レベルで利用する場合、やはり移動するのはむずかしい。

数ヶ月たっても被災地の一部はいまだに水道が復旧しなかった。被災者は飲み水を入れた重いポリタンクを自宅まで運んだり、川で洗濯する作業に追われていた。近くの給水施設で20リットル入りタンク2〜3本分の水をくみ、約50メートルの上り坂を自宅まで毎日運ぶ。食器洗いやトイレに使うと2日ともたない。洗濯と入浴は車で往復20分ほどの山道を通り、隣の地区の実家まで毎晩通う。このような場合や、自動車が使えないケース、道路事情のよくないケースでの水の運搬に活用できるかもしれない。

では、どのようにポリタンクに水をためるか。

 

  • ポリタンクの選び方
    ポリタンクは口の広いものを選ぶ。手が入るくらい口が広いとタンク内部が洗いやすい。内部に少しでも汚れがあると水は腐敗しやすい。また、透明でないものを選ぶ。太陽光や温度上昇による塩素の殺菌能力の低下を防ぐことができ、水のもちがよくなる。
  • 水の入れ方
    洗浄したポリタンクをよく乾かしたのち、水道水を少しずつポリタンクに注ぐ。勢いよく水を注ぐと空気が入り、腐敗の原因になるので注意。ポリタンクの口元まで水が溢れるようにし、空気が入れないように注意しながらキャップを閉める。
  • 保存方法
    ポリタンクを暗くてなるべく涼しい場所におく。ためた水は夜の炊事の後片付けに使い、その後、くみなおしておくのが望ましい。とくに飲用に使う水は、3日をめどにくみなおす必要がある。長期間保存する場合は、直射日光が当たらない冷暗所においておく。くみおいてから時間のたった水を飲むときには一度沸騰させる。
  • 水の入れ替え
    長期間保存する場合は、くみおいた日をシールやタグなどに書いてポリタンクに付け、1か月を目安に中味を入れ替える。元のタンクの水は、水やりや掃除などに使い、タンク内をよく洗い、乾燥させてから再度、新しい水道水を入れる。

さらにつかいやすくすることを考えると、ポリタンクに蛇口をつけておくといい。蛇口つきのポリタンクやレバーを回すだけで、水を出したり止めたりするコックを使ってもいいが、ホームセンターなどで材料を買って自分でつけることもできる。

ポリタンクがなくてもペットボトルに水をためておくこともできる。ためおき方は、ポリタンクと同じだが、注ぎ口とフタの部分に汚れが付着しやすいので、よく洗う。その後、水道水を少しずつ注ぎ、容器の口いっぱいまで水を入れ、空気が入らないよう注意しながら密閉する。

ペットボトルとポリタンクを併用することもできる。飲用はペットボトルに詰めて3日を目処に入れ替え、飲用以外の水はポリタンクにくみおくこともできる。

さらにペットボトルを黒のスプレーで着色して太陽光を集め、温水をつくることもできる。この場合、ペットボトルに入れる水は8分目程度にする。ペットボトルの破裂をふせぐためだ。夏場なら1日屋外におくと(コンクリートの上なら照り返しの熱も集めるので短時間で温まる)40℃弱まで温まるので風呂の湯をつくることができる。

 


 

【今回厳選したニュース・レポート その2】

 

  • 「非常用の飲み水をつくる」
  • (アクアスフィア 橋本淳司)

 


緊急時には雨水、風呂の残り水、比較的汚れの少ない川の水などを飲み水として使わなくてはならないことがある。その場合、簡易ろ過と簡易消毒という2つのプロセスが必要になる。

<プロセス1> ペットボトルを使って自家製の簡易ろ過装置をつくる

【用意するもの】

  • ペットボトル(1.5〜2リットル)
  • 丈夫なヒモ
  • 粒状活性炭(300グラム)ない場合は、小石などで代用する。
  • 丸箸1本

【つくりかた】

  • ペットボトル底部をカッターで切り取る。
  • 切った縁の部分にガムテープをぐるりとまいて補強したのち、千枚通しやキリをつかって左右に1か所ずつ穴をあけ、ヒモをとおす。
  • ペットボトルのキャップに千枚通しなどをつかって、丸箸の先端が刺さるくらいの穴を開ける。箸を折って栓にすると使う分だけ水を出せる。
  • キャップにガーゼを詰める。
  • キャップを下にして活性炭をペットボトルに半分程度まで入れる。

これで簡易ろ過器のできあがり。ヒモで吊るして水を静かにいれ、キャップに差し込んだ丸箸をぬくと水が少しずつ出てくる。ガーゼと活性炭は週に一度は10分間煮沸する。

非常時には粒状活性炭を用意するのがむずかしいだろう。そのときは、手に入りやすいものを工夫してつかう。一番下に洗った小石を入れ、次に焚き火の燃えかす、砂・砂利、布(ハンカチやバンダナ)の順番で入れる。

簡易ろ過器は2つつくり、ヒモの長さを調節して、2段に組み合わせてつかう。上のかにろ過器でつくられた水が、下の簡易ろ過器に入るようにする。これで雨水、風呂の残り水、河川水などをろ過することができる。

この方法は現在でも発展途上国などで使われているろ過器のコンパクト版だ。途上国などでは樽のなかに、小石、砂、活性炭、小石の順番で入れてろ過器をつくっている。

<プロセス2> 簡易消毒する

ただし、簡易ろ過では、水に溶けているものは除けないし、細菌除去も不完全。そこで最後に浄水場で行っているような次亜塩素酸ナトリウムによる滅菌を行う。

  • 簡易ろ過した水を、別に用意したペットボトル(2リットル)3本に詰める。
  • ペットボトル3本のうちの1本に「ちょっと塩素くさいか」と感じる程度に塩素系漂白剤(浄水場での殺菌剤と同じ成分)を2、3滴入れる。塩素系漂白剤は「ブリーチ」「ハイター」などがよい。ただし「キッチンハイター」は洗剤が入っているので使用不可。
  • 塩素系漂白剤を入れたペットボトル水を、ほかの2本のペットボトル水と混ぜて塩素をうすめる。

これで非常時に飲用可能な水ができる。

漂白剤の代わりに、希ヨードチンキやルゴール液をつかうこともできる。希ヨードチンキはヨウ素を3%含んだ外用殺菌消毒薬。本来は切り傷やすり傷の殺菌・消毒に利用するものだが、水1リットルに対しスポイト3滴分を落としてつかう。ルゴール液は、ヨウ素、ヨウ化カリウムを水に溶解させた、口やのどに湿布する医薬品。水1リットルに対してスポイト10滴が目安。

どちらを使用するにせよ、注意して成分表を確認し、ヨウ素の量を基準に分量を決めてください。目安は100ミリリットル中、ヨウ素1%の場合、水1リットルに対して、スポイト10〜20滴。ヨウ素の入った水は薬の味がするので、なるべく少ない方が飲みやすい。

雨水(初期雨水をカットしたもの)も飲用になる。ためた雨水に活性炭を入れ、コーヒーフィルターなどでろ過した後、煮沸するという方法もある。活性炭を使う場合、市販のものを利用してもいいが、なければ冷蔵庫の脱臭剤を再利用してもいい(芳香剤など活性炭以外のものが使われているものは不可)。1つの脱臭剤には60〜80グラム程度の活性炭が入っている。活性炭を用意したらアルミホイルにのせ、フライパンで約10分焼く。すると活性炭に吸着していたにおいがとれる。使っていると活性炭の吸着力が弱くなるので、1ケ月に一度、フライパンで焼くとまた再生することができる。

 


 

 

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