週刊「水」ニュース・レポート    2016年3月10日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

 


2011年3月11日ー東日本大震災、それにともなう福島第一原発事故から5年が経とうとしています。

福島第一原発事故を水という観点から事故を見ると放射能汚染水の問題が深刻です。いまなお毎日およそ40万リットルの水が、メルトダウンした燃料の過熱を防ぐために、原子炉心に注水され続け、放射能汚染水は増え続けています。

この放射能汚染水には、「取り出されて処理されている水」と、「地下に流れこみ外洋に流れ出している水」の2つがあります。

まず、「取り出されて処理されているもの」について。これらは放射性物質を吸着して濃度を大幅に下げる装置「ALPS」(アルプス)で処理されますが、トリチウムやその他の有害な放射性核種を含んでいるので、ひたすら貯蔵タンクで保存されるだけです。

トリチウムという放射性物質は、元素としては水素です。通常の水素は原子核が陽子1個でできていますが、トリチウムの原子核は、そこに中性子が2個くっついています。ですが、化学的には水素なので水素のように振る舞います。

人間の体は、大部分が水でできています。水は、水素と酸素の化合物H2oです。DNAを構成する究極の原子は水素H、炭素C、酸素O、窒素N、リンP。その水素が、放射線を出す水素になってしまえば大変なことがおきるでしょう。

敷地の建屋内やタンクに保管されている放射能汚染水は、2016年2月末で86万立法メートルを超え、今年中に100万立法メートルに達する見通しです。

毎日こうした数字に触れていると、何だか慣れてしまって重大さを感じにくくなるので、自戒を込めて考えてみたいと思います。

1立方メートルとは、一辺が1メートルの箱の大きさです。これが仮に汚染水の貯蔵タンクだとすると、どれくらいの高さまで積み上がるでしょうか?

1立方メートルの貯蔵タンクを100万個積み上げると、100万立法メートルの細長い直方体になります(縦1メートル×横1メートル×高さ100万メートル)。

100万メートルとは、東京スカイツリー(高さ634メートル)の1577倍の高さ

100万メートルとは、エベレスト(高さ8848メートル)の113倍の高さ。

そして、この方法はあくまで仮のもので、永続的なものでない。

過去に、ゴムで封印されたパイプ、簡易型の貯蔵タンクから漏水し問題になったことがあります。しかし、増加ペースが速いため、使用をやめるはずだった漏れやすい簡易型タンクも使って保管を続けています。

ここまでも大きな問題といえますが、さらに深刻な「地下に流れこみ外洋に流れ出している水」について考えましょう。

溶けた核燃料を冷やした水が高濃度汚染水となって建屋地下にたまります。福島原発では水素爆発によって原子炉建屋の屋根が吹き飛び、地震と津浪で施設のあちこちが壊れています。その結果、原子炉内を冷却した水を保管する「地下の貯水槽」から水が地下に漏れています。回収され処理されているのはごく一部です。

そこに敷地地下に流入している地下水が混ざります。

福島原発の地下には地下水脈が走っていて、毎日1000トンの水が原子炉建屋地下に流れ込んでいます。

事故前は、この水を汲み上げて海に流していましたが、事故で汲み上げる装置が故障してしまった。そのため水が原発施設のなかに入ってきたり、放射性物質で汚染された地下水と混ざりながら海に出ています。

そこで、汚染水の海への漏えいを防ぐ「海側遮水壁」をつくりました。港湾内の放射性物質濃度は低下傾向を示していますが、懸念すべきことがあります。地下に水がたまって、原子力発電所ごと水の中に浮いてしまい、大きな浮力を受けて、最後には建物ごとひっくり返ってしまうのではないか。

それには、敷地に流れ込む地下水をなくせばいい。1〜4号機の周囲の土壌を凍らせて「氷の壁」を造り、地下水の流入を減らす。

しかし原子力規制委員会は、周囲の地下水の水位が建屋内の汚染水より低くなることで、建屋から高濃度汚染水が外部に流出する恐れがあると懸念しています。

要するに汚染水問題を収束する道筋ははっきりとしていません。

安倍晋三首相は東京オリンピック招致のプレゼンテーションでこう言いました。

 

  • 「The situation is under control」(状況はコントロール下にある)
  • 「私(安倍晋三首相)が安全を保証します。状況はコントロールされています」
  • 「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」

しかし、招致のための「嘘」なのか「理解が及ばなかったのか」。何がどうコントロールされているのか私には理解できません。

チェルノブイリでは収束のために80万人が現場で働き、27年経ったいまも、毎日数千人が働いています。事故が収束するまでに何度オリンピックイヤーをむかえるかわかりませんし、安倍さんはその頃には亡くなっているでしょう。私たちは、血をはきながら続ける悲しいマラソンを完走しなくてはならないのです。

 


 

 

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