週刊「水」ニュース・レポート    2016年3月16日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

 


皆さんの住んでいる土地は、どのような地形でしょうか?
むかしはどのような場所だったのでしょうか?

身の回りの土地の成り立ちとその土地が本来持っている自然災害リスクを確認することは、豪雨災害の増加が予測される時代を生きるうえで大変重要です。なぜならどこに住むかは基本的に自己責任だからです。火災保険の契約内容や建物の破損状況によって補償が受けられるケースもありますが、保険内容が不足していれば多額の支出が発生しますし、お金だけでなく元の生活に戻るには大変な手間と時間がかかります。

2011年3月11日に発生した東日本大震災の際は、昔は川や沼だった場所で集中的に液状化現象が生じました。過去における河川流路の跡を旧河道といいます。まわりの土地よりも低い帯状の窪地で、非常に浸水しやすく排水も悪いのが特徴です。

2015年に発生した鬼怒川の氾濫では多数の住宅が流され、床上浸水の被害が多発しました。このとき、いつまでも水が引かない場所がありました。「後背低地」です。自然堤防や砂州などの背後にある低地のことで、洪水などで溢れた氾濫水が長期間滞水しやすい軟弱な地盤です。また粘土、シルト(砂と粘土の中間の粒径)、泥炭、場合によっては腐植土などが堆積しているため地盤沈下の恐れもあり、地震動に対しても弱いとされています。本来であれば住宅地には適さない場所といえます。

河川から離れた住宅街であっても「低地」であれば、床上浸水の被害が起きることがあります。低地は、大きな河川沿いや海抜が低い地域だけではありません。街全体は高台に位置していても、その地域内で周辺より低い場所(窪地)も含まれます。

国土地理院は3月9日より、これまで公開していた地形分類図を、新たな形式で公開しました。

 

この公開により、身の回りの土地の成り立ちとその土地が本来持っている自然災害リスクを、皆さんもワンクリックで確認できるようになります。

これまで地域の浸水リスクを調べる方法として最も一般的なのは「洪水ハザードマップ」でした。行政区ごとに発行されており、インターネットで公開している役所もあるので、「市区町村名+洪水ハザードマップ」などで検索してみましょう。役所に出向けば、間違いなく閲覧させてもらえます。

その他にも見ておくといいのが「浸水実績図(その他浸水概略図等)」です。その名の通り実際に住宅や地下駐車場などに浸水した実績が地点で地図上に落としてあります。住宅の形状や土地の整備状況などが様々であるゆえ、近所の他の住宅では浸水しなかったもののあるひとつの住宅だけで浸水したものなども拾ってあると考えられます。

国土地理院のウェブ地図「地理院地図」を利用すると、より簡単に土地に関する情報を知ることができます。自分が住んでいる土地の特性を知っておくといざというときに対処しやすくなります。また、引越しや新しく住宅を購入する際の目安になるでしょう。

では、冠水しやすい土地を購入してしまった場合、責任は誰にあるのでしょうか?

冠水・浸水被害に関する判例を調べてみると、売主や仲介業者の調査や説明の不備を指摘し、賠償命令や和解金支払いの勧告を行った例もあります。

一方で、訴えても勝訴できない事案があります。

過去に、購入した土地が頻繁に冠水することを知った買主が、仲介業者を訴えたことがありました。「瑕疵(欠点)がある土地について、土地の販売を仲介した業者の調査や説明が足りていなかった」と債務不履行を主張したのです。ところが裁判所は、地域のハザードマップを調べるなどの行為は「信義則上の義務」とはしたものの、法令に基づいた義務ではなく、業者はその土地の浸水リスクを知り得なかったとしました。また、その土地だけではなく、付近一帯が冠水していることから、場所や環境による土地の性状は価格評価に織り込まれている可能性があり、この土地に瑕疵があるとはいえないと買主の訴えを退けました。

不動産取引に関する法律「宅地建物取引業法」で不動産業者に義務付けられた重要事項説明には、いくつかの調査・説明義務項目があるが、災害実績や起きうるリスクはその指定項目に入っていません。この点については今後見直すべきでしょうが、同時に自分の身を自分で守るという意識も必要です。

2014年8月20日、広島市で豪雨とそれにともなう土砂災害が発生し、74名と胎児1名という尊い命が失われました。土石流は市内の安佐南、安佐北両区の計50カ所で同時多発的に発生したとみられています。その場所は、長さ約13キロ、幅約3キロの狭い範囲に集中しています。死者74名、ケガ人69名という数字から、土砂災害の特徴が浮かび上がります。土砂は破壊力が大きく死傷率が高いのです。

この土地はもともと自然災害リスクを抱えていました。

阿武山(標高586メートル)は平均斜度が20度という急峻な山です。見上げると屏風が立っているように見えます。山のまわりを反時計まわりに太田川が流れ、山裾から崖錐(扇状地)が広がります。ここに住宅が密集し、地元の人は日頃から「太田川の氾濫が怖い」「土砂崩れが怖い」と話していたそうです。戦後まもなくの古い写真を見ると、阿武山は伐採の影響で木が少なく山肌がむき出しになり、人家もまばらですが、1960年代に開発がはじまり、山手に住宅が建てられるようになりました。それでも洪水や土砂災害を避けるため、低い土地や山際には住宅を建てないという暗黙の了解があったようです。ところが人口が増加してくると、次第に不文律が破られていきます。1999年、広島市や呉市などで30人以上が犠牲になる土砂災害が起きました。これを教訓に「土砂災害防止法」が施行され、宅地開発への本格的な規制が始まりましたが、開発の勢いが止まることはありませんでした。

土砂災害防止法がきちんと機能していたかどうかは疑問が残るところです。広島市の土砂災害危険箇所は6040カ所、そのうち警戒区域に指定されているのは1877カ所で、危険箇所のうち警戒区域に指定されたのは31.1%にすぎません。広島県の湯崎英彦知事は警戒区域の指定が少ないことについて「住民に直接のメリットがない」とコメントしました。すでに土砂災害危険箇所に住宅を建ててしまった人については、何の意味もないということなのでしょう。

はたしてそうでしょうか。自分の住んでいる場所が、土砂災害危険箇所なのかどうか知っていることは重要だと思います。住宅は一生の買い物なので、危険箇所だからといってすぐに引越をすることができないのはわかります。しかし、住み続けていても今回のように雨が降り続いたときに警戒感を強めることはできたでしょう。

不動産会社や地主にとっては、警戒区域に指定されると資産価値が下がると考える人も多いのです。しかし、土砂災害危険箇所であることを隠して売るのは、情報の隠蔽です。瑕疵商品であることを隠して売っているようなものです。もし「災害はこないだろう」とか「売ってしまえばおしまいだ」などと考えていたとしたら、そうとうに罪深いことです。一方、滋賀県の流域治水条例策定の際は、不動産会社がとても協力的でした。浸水する恐れのある土地の情報を公開することによって、お客にきちんと判断してもらおうというわけです。仮に購入するにしても、そういう土地だとわかって利用できますし、盛り土をするなど事前の対策を打つこともできます。

現段階では、自分が購入する土地に関する自然災害リスクは自分自身で調べておいたほうが安全です。今回紹介した「国土地理院地図」はその第一歩となるものでしょう。

さらに、以下のような情報もあり、この分野の情報提供は今後増えていくでしょう。

 

危険な土地には住まないにこしたことはありません。しかし、やむを得ない事情で住んでいることもあります。そうそう引越しするのもむずかしい。その場合でも、きちんとした情報を得て、災害に備えることはとても大切なことです。

 


 

 

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