週刊「水」ニュース・レポート    2016年3月23日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

  • 「パプアニューギニアの貧困層は収入の50%、マダガスカルの貧困層は収入の45%を水に使っていることが明らかに」
  • (「水・衛生の国際NGO WaterAid 〜Water: At What Cost? The State of the World’s Water(水はいくら?−世界の水の状況)〜」 2016年3月22日)
  • http://www.wateraid.org/jp/news/news/water-at-what-cost

 


「荻上チキ・Session22」のなかでも少し触れたのですが、このレポートでは世界各地の「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」が示されています。

まず、なぜ50リットルなのかというと、世界保健機関(WHO)が定めた「1日に最低限必要な水の量」が50リットルだからです。50リットルとは、シャワーであれば5分間、トイレの洗浄水であればジャーバーっと5回、一般家庭のバスタブでは4分の1程度たまったときの水の量です。

50リットルは、日本における1日1人当たりの水使用量の17%です。日本における1日1人当たりの水使用量は289リットル(国土交通省「水資源白書」平成26年版)です。それを風呂・シャワーに115.6リットル(40%)、トイレに63.58リットル(22%)、炊事に49.13リットル(17%)、洗濯に43.35リットル(15%)、洗面・その他に17.34リットル(6%)つかっています(東京都水道局「家庭での水の使われ方」より著者が計算)。

次に「1日の収入」に対する「50リットルの水価格」の割合はどのくらいでしょうか。

東京都水道局によると1リットルの料金は約0.14円ですから50リットルでは7円。

厚生労働省によると東京都の最低賃金時間額が907円ですから8時間働いたとして7256円。

「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」は0.096%です。

ところが、この割合が高い国や地域があります。たとえば「マダガスカル・アンタナナリヴォに住む工場勤務者は45%」「ガーナ・アクラに住む路上食品販売者 25%」などとレポートで報告されています。

このレポートはウォーターエイドのスタッフが現地の人に直接聞き取り調査を行ってまとめられたものです。レポートのいくつかのケースを再構成してみました。

 

<ケース1>
モザンビークの首都マプトに住むアメリアさんの「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」は12.5%

《1日の収入=100メティカル(約248円)》
アメリアさんと夫は、2人合わせて1日100メティカル(約248円)で暮らす。この金額にはアメリアさんがパンを売って稼いだ収入も含まれる。パンについては安定した収入とは言えない。

《1日に必要な水の価格》
3人の子供を含む家族5人分の食事や洗濯、お風呂などに1日280Lの水が必要。アメリアさんの自宅近くには水源がない。安全な水を確保するには、自宅の水道水を転売する違法な水売り人から水を購入するしかない。価格は20Lにつき2.5メティカル(約7円)。家族の1日分280Lを買うには35メティカル必要(約84円)。1日の世帯収入に占める割合は35%。

《「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」》
「1日の収入」は、アメリアさんと夫の2人分を単純に2等分して50メティカル(約124円)。
「50リットルの水価格」は、6.25メティカル(約15,5円)
「1日の収入」に対する「50リットルの価格」の割合は12.5%

 

<ケース2>
パプアニューギニアの首都ポートモレスビー郊外に住むエリザベスさんの「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」は53.6%

《1日の収入=100メティカル(約248円)》
エリザベスさん(53歳)は屋台でスナック類を売ることを仕事にしており、商売が順調にいった週の売上げは100キナ(4,123円)。これは1日あたり14キナ(594円)。

《1日に必要な水を確保するための料金》
エリザベスさんは、飲用・料理用の水50リットルを「ウォーターボーイ」と言われる水宅配サービスから買う。50Lで7.5キナ(303円)。(体を洗うための水、洗濯に必要な水は不衛生な井戸水を利用している)

《「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」》
「1日の収入」は14キナ(594円)
「50リットルの水価格」は7.5キナ(303円)
「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」は53.6%

このように「"1日の収入"に対する"50リットルの水価格"の割合」の割合は国や地域によって大きく異なります。

私もインド人で同様の聞き取りをしたとき、家計に占める水価格の割合が25%を超えていたので、これはエンゲル計水に代わるウォーター計数が必要ではないかと思ったことがありました。

なぜ、このようなことが起きるのか。「1日の収入」という面から考えると経済が未発達で低所得であるといえます。「50リットルの価格」という面から考えると水環境が悪いこと、水インフラが未整備なことから、経済レベルの割に水の価格が高いといえます。また、そこに目をつけた水商売の需要もあり、需要の供給のバランスから水価格が上昇していきます。

こうした地域には低コストで持続的な水インフラの整備が必要です。ウォーターエイドは途上国の人が安全な水を確保できるよう支援を行っています。

 


 

 

【その他の「水」ニュース】