週刊「水」ニュース・レポート    2016年4月6日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

 


「名水百選」制定30年を記念した環境省主催イベントの結果が出ました。「名水百選」には1985年に選出された「昭和の名水百選」と、2008年に選出された「平成の名水百選」があります。昭和と平成を合わせて200ある名水の内訳を見ると、湧き水が138箇所と7割近くを占めています。そのほか河川が49か所、地下水が11か所選ばれていますが、かわったところでは、自噴水が1か所、用水が4か所選ばれています。

今回の選挙では、こうした名水を「観光地として素晴らしい名水」「景色が素晴らし名水」「秘境としてすばらしい部門」「おいしさがすばらしい部門」の4部門で予備エントリーし人気投票しようというものでした。その結果がこちらです。

 

皆さんのお気に入りの名水は選ばれたでしょうか。

こうした名水は保全活動があってこその名水です。観光地、景観の2部門でトップに輝いたのが、安曇野わさび田湧水群です。

昨年同市で行われた「名水サミット」で、安曇野市長から「豊富に思える安曇野市の地下水が毎年減少している」という報告があり、集まった人たちを驚かせていました。

信濃川の最上流に位置する長野県松本盆地には、数百メートルにおよぶたくさんの地下水がたまっている層があります。その量は、琵琶湖の総貯水量の3分の2と推計されています。松本盆地にくらす人たちは、地下水の恩恵にあずかってきました。

ところが安曇野市では数年前から湧き水の水量が減り、名産のわさびが枯れ、「栽培できなくなった」という声が上がるようになりました。ワサビ農家は「ペットボトル水メーカーによる取水、市の水道水源のための取水によって地下水位が下がり、安曇野の産業や観光の柱の一つであるワサビ栽培ができなくなる」と主張しました。

一方、ペットボトル水メーカーは、「北アルプスがはぐくむ地元の水資源を名水として全国に販売するなど魅力をPRしているし、地元の雇用など市と一体となって利益を生んでいる」と主張しました。そうしたなか2011年に地下水保全研究委員会が発足し、地下水の量を調べました。

すると地下水が毎年600万トンずつ減少していることがわかりました。このままでは、いずれ地下水はなくなってしまいます。地下水保全研究委員会は地下水が減った主な理由を水田の減少としています。水田は水を地下に浸透させる働きをしていましたが、減反政策によって田んぼは減り続けています。

安曇野では地下水涵養など具体的な取り組みがはじまりました。ただ、こうした取り組みは流域が一体となって行うことで成果が上がります。安曇野市長は、地下水を増やす政策を流域で行っていかなければならないと強調していました。

「おいしさが素晴らしい部門」で多くの指示を集めたのが秦野市の水です。

秦野市では1960年代半ばに人口が増え、工場も増加し、水の使用量が急激に増えました。その一方で、農地の宅地化が進み、道路の舗装や排水溝の整備なども加わり、地下に浸み込む雨水の量が減りました。補給源である田んぼがなくなり、利用は増えたため、秦野市の地下水水位は下がり、枯渇の不安さえ囁かれた時期もありました。

そこで水資源を守る施策を打ち出しました。73年に「環境保全条例」を定め、地下水の汲み上げの規制や雨水浸透施設の設置、地下水を人工的に涵養する事業などをはじめました。

さらに2000年に、新たに「地下水保全条例」を定め、新しい井戸を掘ることの禁止や開発時に雨水浸透施設を設置するよう義務づけるなど、地下水の質と量の保全に力を入れています。

世界的に水不足が進むなかで、日本には渾々と水が湧き、美しく流れるところがたくさんあります。美しい水辺は人の心を癒してくれる存在でもあり、世界中から多くの人を集めることになるでしょう。そのためにも地元の人が愛着をもって保全活動をしていくことが大切なのだと思います。