週刊「水」ニュース・レポート    2016年4月13日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

  • 「地方自治体の水循環計画 全体の6.7%に止まる」
  • (アクアスフィア 橋本淳司)

 


政府は5月17日、水循環白書を閣議決定しました。

膨大な量なので、読んでるだけで疲れてしまいますし、そもそもなかなか読む気にならいのが、白書なのかもしれません(笑)。

そこで問題点をいくつかピックアップします。

まず、水質や水源の保全、地下水の利用などの政策を一体的に進めるための計画を策定した地方自治体が、全体の6.7%にとどまること。

2014年に成立した水循環基本法では、複数の自治体にまたがり管理が難しかった河川を流域単位で管理するよう求めていましたが、自治体がつくった87計画中、流域全体を対象にしたものはわずか13しかありませんでした。

次に、ダムや水道、農業用水路の耐震化が不十分であること。ゲリラ豪雨の増加などで近年は水害が激しくなっているとして、備えの重要性を強調。高度成長期以降に整備された各種施設が一斉に更新時期を迎えるため、老朽化への対応が急がれるとしています。

そのほか、自然災害の際に水道が甚大な影響を受けたことを踏まえ、復旧訓練や地下水の一時的な利用などの必要性を指摘しています。

このうちとくに取り上げたいのが、自治体の水循環計画がほとんどつくられていないことです。

そもそも、なぜ流域全体を対象にした計画が必要なのでしょうか。

流域というのは、山にふった雨が1つの川に収斂していく水の流れです。河川水も地下水も流域の水です。

水量・水質の確保、水源の保全と涵養、地下水の保全と利用、生態系の保全、災害対策、災害時や渇水時の危機管理などを行う場合、この水の流れをともにする自治体が一体となってとりくむのが合理的です。たとえば、下流域の自治体が水を保全しようと思っても、上流域の自治体がじゃぶじゃぶ使っていたら、水を守ることはできませんよね。

ですから、流域を1つの単位としてアクションを起こすことがのぞましいのですが、実際には、それぞれが個別の目的や目標の達成に向けて取り組んでいて、関係者間で水循環に関わるさまざまな分野の情報や課題、将来像などを共有している取組は少ないのです。

流域といっても大小さまざま。都府県をまたがるものもあり、連携が取りにくい、実際にどのようなことをやっていいのかわからない、というのが実情です。

そうした声に応えるべく、白書には3つの事例があがっています。1つ目は、福井県大野市の北西部に位置する大野盆地に係る流域での取組。2つ目は、千葉県の北西部に位置する印旛沼での取り組み、3つ目は、東京都に端を発し神奈川県を流れる鶴見川の流域での取り組みです。

詳細は以下をご覧ください。

 

少し流域について考えてみましょう。皆さんのおすまいの流域はどうなっているだろうかとイメージしながら読んでみてください。

え、自分のすむ流域がわからない?

安心してください。わかりますよ。

 

さて、話をはじめましょう。

人間の営みは、陸水を集めて活用し、それを海に流すこととも考えられます。そのスピードは近年になって加速しました。

日本の年間降水量は約1700mmですが、急峻な地形のため、多くの水が短時間のうちに海に流れてしまいます。

さらに近年は、森林の荒廃、水田の減少、河川がコンクリート護岸に変わったこと、都市がコンクリートで固められたことなどで、水が地面に浸透する機会は減り海への流れは加速しました。上下水道という人工河川は、上流の水をまちに引き、利用した水を海に流すバイパスとも考えられます。

多様な生物にとっての流域の水脈は細くなり、生息環境の劣化が激しくなっているだけでなく、その影響は海岸線や海洋の生態系にまでおよんでいます。おおまかにいうと、陸地にたまっている水は少なくなっています。私たちが生活につかえる淡水、生産活動につかえる淡水が少なくなっているのです。

なぜでしょう。人口の集中に伴って、都市部を中心に森林や農地が減り、自然がもつ保水能力は低下しています。また、道路の舗装や建築物の密集が進んだ地域では、水が地下に浸透できる面積も縮小しています。そのため、舗装道路や建築物などの上に降った雨は、短時間に大量に貯水・排水設備等に流れ込むことになります。

もとより、山地が多く急峻な地形の多い日本では、降った雨が地表にとどまる時間は短いのです。

短時間に大量に集められた雨水が、貯水・排水設備等の能力を超えれば、その地域に水が滞留する(洪水)可能性があります。

地球温暖化やヒートアイランド現象が、集中豪雨やゲリラ豪雨を引き起こすとすれば、貯水・排水能力を超えた雨量を経験する頻度も高くなるでしょう。

そこで流れていってしまう水を陸地に留めることが大切になります。

正確には、水の流れるスピードをゆるやかにするのです。

それには地表をかけぬけていく水を、いったん地面のなかにもぐってもらいます。

地表の水を地下に浸透させることを涵養といいます。涵養方法はさまざまで、植林や間伐、コンクリート護岸で囲まれた河川を自然型に戻す、都市部で雨水浸透枡を設置する等さまざまです。地域にあった方法を選ぶとよいでしょう。

いろいろなことを流域内で進めるのはむずかしいかもしれませんが、まずは自分のすむ流域を知ることからはじめましょう。