週刊「水」ニュース・レポート    2016年6月29日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

  • 「利根川、渡良瀬川で取水制限。首都圏の渇水は生活にどう影響するか」
  • (アクアスフィア 橋本淳司)

 


6月27日(月)に群馬県みなかみ市藤原にある矢木沢ダムに行きました。

首都圏の水瓶といわれる8つのダムの最上流に位置しています。

当日の貯水率は17%。現在の8ダム体制になってから、6月下旬としては最低の数値です。水位は満水時より30メートルほど低く、湖底が露出している部分もありました。

矢木沢ダムは他のダムに水を供給する役割も果たすので、貯水率は8ダム全体で把握すべきです。

8ダムの貯水率は39%。例年の半分以下です。

原因は雪不足です。この地区で、毎日の積雪量を足し合わせた「累加積雪量」は335センチ。ダムが完成した1958年以来最低、過去58年間の平均46%でした。

みなかみ市藤原にあるガソリンスタンドに勤務されている女性は、

「いつもの年なら3メートルくらいは積もるけれど、今年は少し降ったらすぐに融けちゃうから、冬場通して"つっかけ"(サンダル)で過ごせた。除雪車がぜんぜん動かないからうちは売上げがさっぱりだよ」

と言っていました。

原因は暖冬。全国的に気温が高く、関東、東海で平年より1.4度、近畿から九州では1度高くなりました。そのため降雪量が大幅に減り、融雪時期も早くなりました。

地元の農家の方は、

「いつもの年なら5月の大型連休まで水源の山の頭が白いんだけど、今年は3月下旬には雪が消えていた」

と言っていました。

「雪解け水が流れて一時期的には水の量が多かったんだけど、その後は、あちこちで沢水がなくなったり、川の水が減ったりしているよ」

という言葉のとおり、矢木沢ダムの入り口にある沢は水底からゴツゴツとした石が見え、水はほとんど流れていませんでした。

降水量は同じでも、雪であればゆっくりと水が融け、流れます。雪でないと早く水が流れます。ゆっくり流れたほうが人やいきものにとっては使う機会が長くなります。

利根川水系渇水対策連絡協議会は、6月16日に10%の取水制限を始めました。

渡良瀬川水系も似た状況です。

群馬県みどり市の草木ダムの貯水率は46%(平年比65%)に低下し、渡良瀬川河川事務所はすでに実施していた10%の取水制限を、25日から20%に強化しました。20%の取水制限が6月中に行われるのは1987年以来、29年ぶりのことです。

 

ところで、取水制限、給水制限などと言われてもわかりにくい。

どういうことなのか、以下にまとめてみます。

 

  • 取水制限・・・河川から取り込む水の量を減らすこと。20%の取水制限で農業に影響が出る。
  • 給水制限(減圧給水)・・・水道の圧力が下げられ家庭生活に影響が出る。蛇口を開けても勢いよく水が出なくなる。
  • 給水制限(時間給水・断水)・・・1日に12時間、8時間など、決まった時間しか水道が出なくなる。風呂やポリタンクなどに水をためなくてはならない。
  • 給水車で給水・・・給水車が出動して水を供給する。1人当たりの水量が決まり、ポリタンクなどで水をもらう。

 

次に、過去の首都圏の渇水とその対策についてまとめてみます。首都圏では過去に1964年、1987年、1994年、1996年に渇水を経験しています。

東京オリンピックがあった1964年は歴史的な水不足でした。給水制限が7月~10月の513日間に渡って行われ、ひどい時には時間給水もできなくなり給水車が出動。都民はポリバケツを持って水をもらいました。

病院では、水がないため手術ができない、急患以外は休診という事態になりました。

また包丁やまな板などを十分に洗うことができず、魚の食中毒が続出しました。

 

1994年は九州北部から関東まで渇水になりました。

この時の6月の利根川系ダムの貯水量は60%で、東京では7月29日〜9月8日、最大15%の給水制限(減圧)が行われました。

 

話を現在に戻しましょう。いま状況が続くと、どうなるでしょうか。

よく聞かれるのが、「東京で水道から水が出なくなりますか」ということです。

これについては、まず、ほかの水系を確認することが大切です。利根川、渡良瀬川では水が足りなくなっていますが、荒川や多摩川はどうでしょう。荒川4ダムの合計貯水率は58%(平均値の103%)、多摩川水系の小河内ダムの貯水率は81%(平均値の103%)と平年並み。ひとまず、こちらから水を融通してもらうことはできそうです。

根本的な水不足の解消は、お天気頼み。それも水源地に雨が降るかどうかということです。

東京に雨が降っても下水として排出されるだけで、生活用水としてはほとんど使われない。東京に住む人の生活用水使用量は年間20億トンに対し、東京に降る雨の量は年間25億トン。雨のほうが多いのですが、有効に活用されることなく捨てられています。ここを改善することなくダムの貯水率ばかり気にするのはそもそもおかしなことです。

気象庁の発表では、東日本の降水量は、平年並またはやや多め。首都圏の水不足の早期解消は、梅雨の間に平年より雨がたくさん降るか、7月中に台風が来るかにかかっています。ただし、雨は適量降ってくれるとは限りません。多すぎて困ることも多々あります。

いずれにしても雨と雪のことを少し勉強して、上手につきあいたいものですね。

そして、現在の状況がよくなるまでは、節水が必要です。