週刊「水」ニュース・レポート    2016年11月23日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

 


赤潮の原因となるプランクトン。赤潮は、特定のプランクトンが異常に増殖することで起き、いったん広い範囲で発生すると対処法はありません。赤潮は古くから水産業を脅かす大きな原因の一つでした。

過去に赤潮の海面回収、超音波、海水循環、オゾン、過酸化水素,硫酸アルミニウムなどを用いた、物理的・化学的対策が試みられてきました。ところが、いずれも海洋面積に対する経済性の問題や、生態系への悪影響・安全性などの問題からほとんど実用化には至りませんでした。

今回、プランクトンだけに感染するウイルスを使い、赤潮の拡大を止める技術が開発されました。

海水中には1ミリリットルあたり、100万から1億個ものウイルスが存在します。これらのウイルスは生態系のなかでさまざまな働きをしています。

このなかに植物プランクトンの命を奪うウイルスがいます。

元気な植物プランクトンが入った容器に、植物プランクトンに感染するウイルスを入れると、1週間以内に植物プランクトンは全滅してしまいます。ウイルスの自然界における働きはさまざまですが、大きな役割の1つは特定の植物プランクトンの増えすぎを抑えることです。赤潮になった植物プランクトンも、自然にウイルス感染が広がることで、赤潮の消滅に至ることがあります。

今回の開発したのは、水産研究・教育機構瀬戸内海区水産研究所のグループ。この技術のメリットは主に3つです。

 

  • 赤潮を早く消滅させる(2~3日で赤潮の原因となるプランクトンを死滅させる)
  • 大掛かりな設備などが必要ないため生産コストが安い
  • ウイルスは宿主特異性が極めて高いため(他の生物に与える影響が少ない)、生態系を乱すことなく標的有害藻類を選択的に駆除できる

新しい赤潮対策として来年以降実際の海で応用することにしています。

とてもよい技術に思えますが、いくつかの疑問点はあります。

このウイルスは天然の微生物農薬と言えます。そうしたものを使うには多くの知見が必要になります。

また、微生物農薬を使えば解決という風潮になると赤潮の原因となる排水等の問題を解決する意識が薄くなる可能性もあります。対症療法はあくまで対症療法と考えるべきでしょう。

さらにウイルスが効果をあげて植物性プランクトンが大量に死んだ場合、貧酸素状態をつくる可能性があります。その場合、魚への影響も出るでしょう。

今後の研究に注目したいと思います。