週刊「水」ニュース・レポート    2016年12月29日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

  • 「今年1年を水のニュースで振り返る」
  • (アクアスフィア 橋本淳司)

 


この水ニュース・レポートの目的は、水についての情報をピックアップしてお伝えするとともに、水を通して社会を見つめ、いかに生きていくかを考えることにあります。そこで今年1年の主な水ニュースを振り返りながら、私たちの生きている社会の有り様を見つめたいと思います。

2月、大阪市の吉村市長が全国初となる水道事業の民営化条例案を市議会に提出しました。水道事業は人口減少による収益の低下、老朽化した水道管の更新費用の増加などの問題を抱え、経営が困難になっています。そこで民営化によって水道事業を立て直そうというわけです。民営化こそ課題解決の最良策という意見、一方で民営化を危惧する意見があります。

 

 

  • 4月14日午後9時26分ごろ熊本県で震度7の揺れを観測、16日午前1時25分ごろ熊本県で震度6強の揺れを観測(マグニチュード7.3)、その後も大きな揺れが続き、各地で家屋の倒壊などの被害が広がりました。地下水が枯れたり濁ったりして、断水が続きました。
  • http://www.aqua-sphere.net/newsletter/2016/0503.html

 

  • 6月になると首都圏で渇水が心配されるようになりました。6月17日に矢木沢ダムに行ったときの貯水率は17%。現在の8ダム体制になってから、6月下旬としては最低の数値です。水位は満水時より30メートルほど低く、湖底が露出している部分もありました。この問題は7月下旬まで続きました。
  • http://www.aqua-sphere.net/newsletter/2016/0629.html

 

 

  • 8月25日、ベルリンにおいて、「世界リスク報告書2016年版」が発表になりました。日本は世界17位。上位国を見ると社会インフラが惰弱な国が多く、その整備が課題になっています。一方日本はインフラ整備が一通り終わっているのに、これだけリスクが高い。それだけ地震や水害に見舞われることが多いということなのです。
  • http://www.aqua-sphere.net/newsletter/2016/0831.html

 

  • 9月には、台風が続々とやってきました。日本周辺は海水温が引き続き高く、台風が発達しやすい環境にありました。【台風接近状況別チェックリスト】をつくりました。
  • http://www.aqua-sphere.net/solution/11/as11.html

11月8日、JR博多駅前で大規模な道路陥没事故が発生しました。この原因については以下のラジオ番組で解説しています。

 

この事故はトンネル工事によるものですが、都市部の地下空間には上下水道も複雑に張り巡らされています。

敷設から長年経過して老朽化したものは漏水しています。

上水道管の耐用年数は40年と言われていますが、40年前にあたる1975年以降、水道の発達につれて集中的に上水道管が地中に埋められました。その管が耐用年数を越え、水漏れする問題が各自治体を悩ませています。水道管の水漏れは深刻な二次災害をもたらします。上水道管が大きくなればなるほど、水の流れる勢いが増すため、漏水時の水の勢いも大きくなります。水は土砂も一緒に巻き上げて噴き出すため、もしガス管が近くにあると破損させます。ガス漏れを併発し大事故を引き起こしかねません。

この1年を振り返ってみると、気候変動とインフラの老朽化というキーワードが浮かび上がってきます。

気象庁が発表した「積雪・降雪の将来予測」によると、積雪・降雪量は、

 

  • 東日本、日本海側を中心に減少
  • 北海道内陸の一部地域では積雪・降雪ともに増加
  • 積雪・降雪期間は始まりは遅く、終わりは早くなる

とのこと。温暖化・海面上昇で十分な水蒸気がもたらされるため寒冷地では雪がたくさん降っても、根雪にはならず融け出しが早くなるでしょう。

たとえば、降雪期間が主に12月、1月、2月、雪の融けだしが3月下旬だった地域が、降雪期間が1月下旬から2月下旬まで、雪の融けだしが3月上旬になる。こうなると、いきものや人の暮らしに大きな影響を与えるでしょう。水田の水は雪解け水に依存しているので、雪が融けるのが早くなれば、田んぼに水を張る時期を待たずに水が流れていってしまうし、現在のダム立地は冬場の降雪を考えてつくられているから、これらの機能が弱まり夏場の渇水につながるなど、いろいろあります。

一方でまちの老朽化が進み、インフラが維持できない自治体が出てきます。日本全体としては縮小に向かうなかで、コンパクトシティの中と外でまちの様相は大きく変わるでしょう。

成熟社会には成熟社会のインフラの考え方があります。

人口が密集している地域では、これまで使用していたインフラを大切に使っていくことです。

人口がまばらな地域では新しい方法が必要になるでしょう。

たとえば、エネルギーや水を自給できたり、下水を再生して利用できる装置を備えた住宅、凸凹道でもスムーズに移動のできる車などです。インフラは私たちの生活を快適にしてくれますが、過剰な投資は大きな負担になります。

インフラを維持するために生活が苦しくなってはいけません。私たちは新しい方法を考える時期に入っています。