週刊「水」ニュース・レポート    2017年3月2日号

 

 

 

【今回厳選したニュース・レポート】

 

  • 「水道事業の新形態?『みやぎ型管理運営方式』の行方」
  • (アクアスフィア 橋本淳司)

 


今年になって宮城県の水道事業が大きく変わろうとしています。

1月23日、2020年度から、県内の広域上水道と下水道、工業用水の3事業を一体化し、民間企業と運営権契約を締結する方向で調整していることが明らかになりました。

宮城県の水道事業は、人口減少により需要が減り、将来的に収益が減少すると予測されています。

広域上水道事業の収益は、
2015年度 150億円

それが

2045年度 130億円
に減少。一方で、機械や水道管の更新費は累計で1900億円に達します。

この問題をどう解決するのか。

宮城県は「みやぎ型管理運営方式」として、大崎と仙南・仙塩の両広域上水道、仙塩、仙台圏、仙台北部の3工業用水、仙塩と阿武隈川下流の2流域下水道事業を一体化。民間企業が出資して設立する「特定目的会社」に運営権を与えます。

特定目的会社は、料金収入と設備の一括発注などコスト削減で利益を確保。県は料金設定の権限を持ち、上水道、工業用水の管路更新も引き続き担います。

事業形態としては、完全民営化ではなく、県の関与を残した形となります。

2月9日には、運営権を民間企業に与える仕組みを検討する官民組織の初会合が宮城県庁で開かれました。

内閣府、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、大手商社、金融機関などの担当者約90人が出席しました。

ここでは新方式にかなり前向きな声が上がりました。

主な発言を紹介します。

村井嘉浩知事:「県が水供給の責務を果たしつつ、官民の連携を進めたい」

内閣府福田隆之大臣補佐官:「全国の先駆けとなる」「行政では見えぬノウハウ、付加価値が民間なら見えるものがある」「全国のモデルを作る意義がある」

三菱商事倉持秀夫水事業部長:「安定的収入が見込め、今後伸びる分野と考える。公共サービスを担うことは、企業の社会的価値を高めることにもつながる。チャレンジしたい」

「みやぎ型」は変則的な民営化方式に特徴がありますが、そこへの批判の声(簡単に言えばもっと民間にませたほうがいい)という意見もありました。たとえば、

七十七銀行遠藤禎弘地域開発部長:「料金を官が決めるままならば効果を見いだしにくい。なかなか難しい」

三菱商事倉持秀夫水事業部長:「管路を除いた機械などの設備更新を企業側が担うためリスクと対価のバランスが大切」

フランス・ベオリア社日本法人山崎敬文副社長:「将来は市町村が担う家庭への給水も民営化すべきだ。蛇口までの一体的な運営が最適」

この会合では、県の関与を残す変則的な民営化を歓迎する、もしくは県の関与を残さない完全民営化をすべきという声ばが大半を占めました。

内閣府の福田氏は、株式会社野村総合研究所にて初の国実施PFI(平成14年)である財務省案件をはじめ、防衛省・大阪府・新潟県・道路公団等へのPFI・民営化アドバイザリー業務、経済産業省や金融機関等へのインフラ投資市場調査業務、民間企業のPFI事業参入支援業務などに従事してきた人なので、新方式に前向きなのは当然でしょう。

水道事業を行いたい三菱商事、ベオリアが民営化を歓迎するのも当然のことです。

一方で、宮城県内で新方式を危惧する声はごくわずかです。

2月27日、県議会で村井嘉浩知事は「水道事業を民間に売り渡すわけではなく、長期的で安定的な経営を維持することが可能だ」との認識を示しました。

水道事業の改革は全国の自治体で課題となっています。

広島県は第三セクターを設立して維持管理を委託、大阪市と奈良市は完全民営化を計画しましたが、「民間に任せて良いのか」との批判が上がり、市議会で条例改正案が否決されました。

今後、宮城県はどうなるのか。水道法の改正とも重なり注目されます。