アクアコミュニケーターの知恵
水をめぐる争いのはなし | Story of the battle for water
「母なるメコン」にはしる緊張

メコン川はチベット高原に源流があり、6か国を流れ、南シナ海にそそぐ。
流域の国ぐにでは、メコン川を「母なる川」と呼ぶほど、生活にかかわる水のほとんどを頼っている。
たとえば、ラオスは水力発電に必要な水の半分をメコン川からひいている。
タイは、耕地の50%がメコン川流域にある。
最も上流にある中国は、国内で不足する電力をメコン川での水力発電でおぎなおうと、大型ダムをつぎつぎに建設している。
ところが、中国でダムが建設されると、川の水量がへり、下流域では漁獲量がへったり、農業用水が不足したりするようになった。
下流の国ぐには、
「メコン川の水量が減ったのは、中国がダム建設を行ったためだ」
と出張しているが、
中国は、
「ダム建設の影響はない、下流の国ぐにのことを考えて水を使っている」
と主張し、メコン川流域の国ぐにのあいだに緊張が走っている。
メコン川下流域の
- タイ、
- ラオス、
- カンボジア、
- ベトナム
の4か国は、川の利用に関する利害の調整を図るため、「メコン川委員会」をつくって話し合いをつづけてきた。
たとえば、1990年代に、水利用をめぐって、タイとベトナムが対立したことがあった。
タイがダム建設による電力開発をすすめたとき、下流に位置するベトナムは、
「上流の開発のために川の流量が減り、塩害が起きて困っている」
とダム建設の中止を求めた。
しかしタイは「自由な水利用」を譲らなかった。
このとき、メコン川委員会が両国の主張を調整し、その後、本流へのダム建設は凍結された。
しかし、メコン川委員会には大きな問題がある。
それは上流に位置する中国とミャンマーは未加盟で、オブザーバー参加にとどまっていること。
下流の4か国だけでは、上流国の行動をとめることはできない。
このため、根本的な解決がむずかしくなっている。