アクアコミュニケーターの知恵
水をめぐる争いのはなし | Story of the battle for water
水が生む国と国との緊張
シンガポールとマレーシアは水の売買をめぐり対立していた。
マレーシア南部のジョホール海峡をはさんだ対岸にはシンガポールが見える。
海峡にかかる橋のわきを、直径1.5メートルほどのパイプが走っている。
これはマレーシアからシンガポールへ水を送るパイプ。
シンガポールでは家庭用水・工業用水など合わせて1日3億ガロン(1ガロン=約3.785リットル)必要で、その半分をマレーシアからの輸入に頼っていた。
シンガポールの国土は狭く平坦で、水の確保が難しい。
その一方、経済成長とともに水の需要は増加した。
一方、マレーシアの降水量は年間約2400ミリで、世界の平均降水量である970ミリの2倍以上。
マレーシア政府は豊かな水資源を国の発展に活かすことを考えており、シンガポールへの水供給はその一つ。
だが、両国の関係がぎくしゃくすると、マレーシアが水の不買や値上げを示唆するため、シンガポールには緊張が走った。
1998年にマレーシアが水の供給停止威嚇を行なったときには、シンガポール軍は出撃準備を行ったほど。
そのためシンガポールは水の自給を模索するようになった。
現在では、さまざまな技術を駆使し、海水を真水に変えたり、下水を再生したりしながら、「水の自給率」向上を図っている。
韓国の首都ソウルを流れる漢江の上流は北朝鮮の水源地帯で、大型ダム(金剛山ダム)が建設されている。
もし両国が戦争状態に突入した場合、北朝鮮がダムから一気に放水すると漢江は氾濫し、首都ソウルが大きなダメージを受ける可能性がある。
そこで対抗策として、韓国は国境近くに空っぽの大型ダム(平和ダム)を建設した。
これは世界でも前例のない、戦争防衛目的に建設されたダムである。
今後、世界中で水不足が起きると、こうした緊張は各地で起こると予想され、いまから対策を考える必要がある。