アクアコミュニケーターの知恵
水と地球環境のはなし | Story of the global environment and water
水のメガネ
(1)食べものがつくられた過程で使われた水が見える
ここに「水のメガネ」があります。
このメガネで食べものをのぞきます。
すると不思議なことに、その食べものがつくられる過程で使われた水の量が見えるのです。
食卓にパン1斤がおいてあります。
試しに、水のメガネでのぞいてみましょう。
大きな水のかたまりが見えます。
水のかたまりは、10リットルのバケツで63杯分、つまり630リットルあると水のメガネが教えてくれます。
いったいどういうことでしょう。
パン1斤つくるには300グラムの小麦粉が必要です。
そして小麦粉300グラムをつくるには630リットルの水が必要です。
水のメガネは、そうしたことを教えてくれるのです。
630リットルとは、10リットルのバケツで63杯分、風呂桶だと3杯分です。
つまり、パン1斤つくるのに必要な水は、3日分の風呂水と同じなのです。
今度は、茶わん1杯のご飯をのぞいてみましょう。
また大きな水のかたまりが見えます。
水の量はバケツ28杯分。
すなわち茶わん1杯のご飯には、米が75グラム入っています。
それだけの米をつくるには277リットルの水が必要なのです。
もし朝昼晩3度の食事でご飯1杯ずつ食べるとすると、1日にバケツ84杯分の水を食べることになります。
人間が生きていくには水が欠かせません。
人間の体は約6割が水ですが、その水は体内にとどまっているわけではありません。
入ってくる水があり、出ていく水があって、人の命は維持されています。
人間の体からは1日に約2.5リットルの水が出ていきます。
健康な人は、おしっこやうんちとして、1日1.5リットルの水を体から出します。
皮膚の表面からは汗として0.5リットルの水が出ていきます。
いつのまにか失われる水もあります。
ガラスに息を「はあ」とかけると白く曇ります。
あれは肺から息とともに出てきた水分がガラスについたものです。
肺や肺に通じる空気の通り道はいつも湿っていて、吐く息から1日0.5リットルの水が出ていきます。
出ていくばかりでは、体から水がなくなってしまいます。
水がわずかに不足しただけでもイライラしたり、気分が悪くなったりします。
ですから私たちは、出ていった水とほぼ同じ量の水を補給しているのです。
ですが水のメガネをのぞいて、食べものがつくられる過程で使われた水を見ると、実際に飲んだり食べたりするより、はるかに多い水を食べていることに気づきます。(続)
出典『水のメガネ』(橋本淳司)『OCONOMISSION2010』収蔵