アクアコミュニケーターの知恵
水と地球環境のはなし | Story of the global environment and water
水のメガネ
(最終回)早朝の道端に見えた水のかたまり
水のメガネをかけて朝の街を歩いてみました。
するとあちこちに巨大な水のかたまりが見えます。
いったい、なんでしょう?
メガネをはずしてみると、そこにはポリバケツがありました。
水のかたまりの正体は、家庭やレストランから出された食べ残しでした。
日本は世界中から食料を買い集めています。
その一方で、世界一、食べ残しの多い国でもあるのです。
捨てられる食べものは年間約2000万トン。
供給された量の約3分の1。
年間の食品廃棄物量は、
一般家庭から1034万トン、
レストランやスーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの食品産業から1135万トンで、
合計2169万トン。
これは世界の食料援助総量の約3.7倍にもなります。
飢餓に苦しむ人たちに送る食料の4倍近くを捨てる私たち。
仮に捨てられたものをご飯として計算すると、1年間に790億トンの水が捨てられたことになります。
これは日本人1人当たり1日1.8トンの水を捨ててしまう計算になります。
パーティーや宴会では、食べきれないボリュームが豪華さや贅沢さの象徴となるためか、当たり前のように食べ残します。
家庭でも
- 「賞味期限が切れた」
- 「冷蔵庫に入れたまま忘れた」
- 「つくったが食べきれない」
などの理由で、食べものが捨てられます。
ゴミ捨て場を水のメガネでのぞくと、とてつもなく大きな水のかたまりが見えます。
ファミリーレストランのメニューをつくるのに使われた水を思い出してください。
もしトマトスパゲティを1人前残したら650リットルの水を捨てたことになり、
もしハンバーグ定食を1人前残したら 2237リットルの水を捨てたことになります。
(詳しくは↓)
水のメガネ (3)ファミレスのメニューにはどれくらいの水が使われていたか
水のメガネをとおして見ると、わたしたちが世界中から水をかき集め、捨てている様子がよくわかります。
もし食べきれるぶんだけつくり、残さずに食べれば無駄にはなりません。
これは水を大切にすることでもあります。
一般的に節水というと、
「蛇口をこまめにしめる」
などと言われます。
たとえば、シャワーヘッドからは1分間に8リットルの水が出るので、10分間シャワーを使うと80リットルになります。
もし流しっぱなしにしないで、体を洗っている時にシャワーを止めたりすれば、だいぶ水を節約できるでしょう。
それでも、食べものをつくるときに使われた水の量とは比べものになりません。
食べものを大切にすることが水を大切にすること。
水のメガネはそんなことも教えてくれます。(終)
出典『水のメガネ』(橋本淳司)『OCONOMISSION2010』収蔵