アクアコミュニケーターの知恵
水と人々の健康のはなし | Story of people's health and water
ホルムアルデヒド問題が教えてくれたこと
利根川の浄水場で、基準を超える有害なホルムアルデヒドが検出され、千葉県内では、およそ35万世帯が断水するという異常事態に発展した。
この事態によって2つの問題が浮き彫りになった。
1つは、河川ではほぼ無害な水が、浄水場の塩素消毒により有毒化したということ。
当初から原因物質はヘキサ・メチレン・テトラミンと疑われていたが、水質基準の規制対象外の物質だったため、強制的な立ち入り調査の権限がなかった。
細野環境大臣は、規制化の検討を表明したが、ヘキサ・メチレン・テトラミンのように塩素と反応して有害化する物質は、数百種にのぼるため、規制するのはむずかしい。
もう1つの問題は、自治体間の壁、部局間の壁にはばまれ、水道行政の連携がうまくいかなかったこと。
埼玉県から群馬県に「ホルムアルデヒドの数値が高い」と告げられたのが17日。
その日、群馬県企業局の水道事業幹部は、検査結果が翌朝に判明するという理由で、部内の懇親会を開いていた。
水質調査を担う環境保全課に情報提供したのは翌18日。
実際の河川の検査は19日にずれ込んだ。
こうした初動の遅れによって、対応は後手後手にまわった。
1つの例として、千葉県柏市では、事前連絡のないまま断水に突入し、いつ復旧するかという見通しもまったくわからなかったので軽いパニック状態に陥った。
広域汚染に対する自治体間の連携のまずさを解消するためにも、今後は流域が一体となった水管理がすすめられるべきだろう。
最後にもう1つ付け加えておくと、断水した地域で困ったのは飲み水よりも、やはりトイレの流し水だった。
水道水や風呂の残り湯を備蓄していれば、(生活用水に限れば)緊急対応できたはずだが、東日本大震災の教訓は活かされていないといえるのかも。
いまからでも遅くはないと思うので、あらためて水の備蓄方法をお伝えします。
備えあれば憂いなしです。