アクアコミュニケーターの知恵
水と人々の健康のはなし | Story of people's health and water
PRによってつくられる「名水」「効く水」(1)
たいしてよくもない水を「名水」と売る人がいるのも困りものだが、さらに困ったことに、水に不思議な効果をくっつけて、いわゆる"効く水"を高く売る人もいる。
"効く水"の歴史は古い。
最近は炭酸ガス入りの水の消費量が増えてきたが、国産第1号のボトル水も炭酸水だった。
1880年(明治13年)、当時発行されていた「東京絵入り新聞」に、「山城炭酸水」という商品の広告が載っていて、これが国産第1号ではないかといわれている。
ちなみに販売価格はひと瓶20銭。
ビール大びん1本14銭、日本酒1升14銭、キツネうどん1ぱい1銭という時代だからかなり高い。
それでもけっこう売れた。
そのほかにもいくつか炭酸水が販売され、明治時代には炭酸水が国民的なブームになった。
なぜ明治時代にこれほど炭酸水が飲まれたのか。
じつは当時、大流行したコレラの予防に「炭酸ガス入りの水が効く」と考えられていた。
きっとメーカーがコレラ予防に効くと宣伝したのだろう。
いまなら薬事法違反である。
それでもPRが功を奏し、炭酸ガス入りの水は国民的ブームとなったのだ。
ひと瓶20銭という高い値付けも薬と考えれば納得できる。
でも、その後、コレラが沈静化するとともに、炭酸水ブームは去った。
興味があるのが、炭酸水がコレラ予防に効いたかどうかである。
もちろん効くわけない。
いまなら笑っちゃう話だろう。
でも、いまでもこうした話はよく聞くではないか。
「○○病がたちどころに治る奇跡の水」なんていう"効く水"が、結構な高値で売られている。
明治時代の炭酸水と同じ手法。
つまりPRが功を奏しているのである。
"効く水"を信じる信じないはあなたの自由。
でも、PRでつくられた"効く水"があるということを頭の片隅に・・・