アクアコミュニケーターの技術

 

 

aqua-solutions 08

2012.10.18

 

 

限界集落、開発途上国の課題を解決!市民が管理できる小規模給水施設



2. 市民管理の小規模給水施設 ⑵

代替案は市民が自主管理する小規模飲料水供給施設である。

それにはいくつかの要件を満たす必要がある。

まず建設費、維持管理費ともに安価であること。

豊後高田市の黒土地区は高齢世帯が多く(高齢化率55.2%)、収入は年金という人が多い。

施設整備の高額な負担には耐えられない。

調査の結果、1世帯10万円が限度とわかった。

次に維持管理が簡単であること。

高齢者が多いので、重労働や複雑な作業(たとえば薬品を扱うなど)をともなう維持管理は難しい。

そこで「NPO おおいたの水と生活を考える会」は、現有施設に生物浄化法(緩速ろ過)の浄水施設の付加を行うことを地区に提案した。

その理由は、

 

【理由1】

生物浄化法(緩速ろ過)は、ろ過層の表面に棲む目に見えない生物群集の働きで水を浄化する。

薬の力は使わず、森の土壌が水をきれいにする自然界のしくみをコンパクトに再現したもの。

単純ではあるが、信頼性の高い浄水方法である。

大雨のときなどの水の汚れには対応しにくいという弱点はあるが、簡単な前処理施設(沈殿池や粗ろ過槽)をつけることで問題は解決できる。

 

【理由2】

ろ過閉塞にともなう砂のかきとりなどを必要とするが、軽作業で高齢者でも対応可能

 

【理由3】

浄水に薬品を用いないため維持管理が簡単である

 

【理由4】

建設コスト、維持管理コストとも他の方法に比べ安く、住民の負担が小さい

の4点。

 

<生物浄化法(緩速ろ過)のしくみ© 中本信忠(地域水道支援センター理事長)>

 

地元住民はこの提案に同意。

大分県、豊後高田市からの助成も受け、浄水能力8トン/日の小規模飲料水供給施設が整備され、2011年4月より稼働。

総工費は700万円、地元負担は1世帯当たり約5万円だった。

 

<豊後高田市/黒土集落の小規模給水施設>

 

 

<浄水前の水、浄水後の水>

 

稼働から1年半経った現在も、地元住民によって管理が行われる。

具体的には、毎日のろ過流量管理。

簡単に言えば、「動いてるかな?」と見ること。

これは犬の散歩のときなどに行っている。

2週間ごとの粗ろ過地の洗浄、2か月ごとの濾過地の閉塞除去作業(落ち葉やごみなどの取り除き作業)を住民が交代で行う。

また、「NPO おおいたの水と生活を考える会」は、約1か月に1回の訪問による状況モニタリング、水質検査、維持管理・施設の改善案の提案などを行っている。

財政難などから公共サービスは縮小傾向にある。

すると現在受けている公共サービスが受けられなくなる可能性がある。

いわゆる公共サービスの「ほつれ」である。

そうしたなか、自治体とNPOと市民が共同し、「ほつれを補う」という新しい形が誕生したといえるのではないか。