アクアコミュニケーターの知恵

 

 

水と地球環境のはなし  |  Story of the global environment and water


 

水のメガネ
(6)牛肉を育てる水がなくなっている

 

水のメガネの

「ふるさとが見える機能」

をつかって、今度はスーパーマーケットで買った牛肉をのぞいて見ました。

するとオーストラリアの農場で、深いため息をつき、考え込んでいる農夫の姿が見えます。

牛を育てるには、たくさんの水が必要です。

でも、その水が足りないのです。

オーストラリアは、国全体が深刻な水不足に苦しんでいます。

市民は節水しなくてはいけません。

オーストラリアにホームステイした学生が水道水を流しながら食器を洗ったために怒られたという話をよく聞きます。

日本で食器を水洗いするのは当たりまえですが、じつはこうした国は少数です。

台所のシンクに水をためて洗剤を入れ、食器をつけ洗いして、布で拭きとるだけです。

オーストラリアでは数年前から水不足がいっそう深刻になり、クイーンズランド州は、マリンスポーツのメッカであるにもかかわらず、ビーチのシャワーは止められました。

さらにガーデニングや洗車のための水の使用も制限されています。

そうしたなか、シドニー南部の住宅地で「水まき」が原因でけんかとなり、男性が死亡するという事件が起きました。

自宅の庭で制限されていた水まきをした男性がいました。

水の無駄遣いに敏感になっていた通行人がこの男性を注意しました。

それで口論となり、男性は殴る蹴るの暴行を受け、殺されたのです。

水泥棒も起きています。

夜のうちに貯水タンクの横に大型給水車で乗り付け、タンクのなかの水を奪っていく、あるいは貯水コンテナごとクレーンで持ち去るのです。

このような状況ですから、牛を育てるのはむずかしくなってきました。

そこで政府は農家の取水を制限し、代わりに水を市場で売り買いできるようにしました。

そうすれば水を効率よく利用しようという意識が高まり、節水のための大規模な設備投資も行われるだろうと期待したのです。

ところが市場にまかせた水の価格は跳ね上がり、水が買えない農家が現れました。

最近では牛の飼育を止め、水をあまり使わないオリーブ栽培へと代える農家も増えています。(続)

 

 

出典『水のメガネ』(橋本淳司)『OCONOMISSION2010』収蔵

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