アクアコミュニケーターの技術
aqua-solutions 08
2012.10.18
限界集落、開発途上国の課題を解決!市民が管理できる小規模給水施設
- 市民管理の小規模給水施設 ⑴
- 市民管理の小規模給水施設 ⑵
- 市民管理の小規模給水施設 ⑶
- 市民管理の小規模給水施設 ⑷
- 市民管理の小規模給水施設 ⑸
3. 市民管理の小規模給水施設 ⑶
<津山市/下り茅水道>
津山市(人口11万人)の水道普及率は99.4%で、未普及地域が推計254戸(約730人)あった。
水道未普及地域は、市街地から地理的に遠いが、これまでは清浄で豊富な水を住民が簡易処理して使用していた。
しかし、近年になって以下の課題が発生した。
- 高齢化の進展により施設の維持管理がむずかしい
- 雨天時の濁り、野生動物の糞尿などが原因で水質が悪化する
- 山の保水力の低下などが原因で水量が不安定
これらの課題を津山市の水道事業の仕事として解決を図ろうとするのは財政的に厳しい。
そこで、
- 「小規模飲料水供給施設整備事業補助」
という制度をつくった。
これは、
- 「浄水場の未整備地域における生活環境の整備および保健衛生の向上を図る」
ために、
- 「小規模飲料水供給施設の新設」
などの経費の一部を「予算の範囲内で補助する」もの。
補助の大前提は、地元の水道管理組合が、施設の設置、運営の責任を負うこと。
つまり大分の事例同様、市民が自ら水道管理をすることが前提になっている。
そのうえで以下の条件に合う事業に補助金が出た。
- 水道法第4条の基準に適合する安全を供給すること
- 戸数10個以上、給水人口20人以上100人未満の規模(水道法の適用外)の地区
- 補助申請に対し、対象戸数の90%以上の同意があること
補助率は、取水・ろ過施設の設置に60%、給配水管施設に30%、自己負担額の上限を超えた部分、今後の水質検査費用に50%(上限10%)。
これまで3地区で住民による小規模水道事業者が動き出している。
小規模飲料水供給施設は、維持管理を地元組合が行うため、
- できるだけ構造が単純で管理の手間が少ない
- ポンプ等の動力を使用しない自然流下とする
- できる限り薬品類を必要としない施設とする
などが考慮され、生物浄化法(緩速ろ過)が採用された。
設計・管理はNPO地域水道支援センターが行った。
同センターは、地域に根ざし、地域の人々を中心に、地域の自立と発展のための水道事業を支援する目的で2006年に設立。
市民に対する啓発、各分野の専門家との情報交換・交流、中小規模水道や簡易水道に対する技術・経営上のコンサルティング業務を行なう。
現在、津山市では3つの小規模飲料水供給施設が稼働。
生物浄化法(緩速ろ過)だけでは高濁度時の対応がむずかしいので、粗ろ過施設を1次ろ過池としている。
深山水道(給水人口17戸73人、総事業費5089万円、補助費3046万円、地元負担2040万円)、
奥津川水道(給水人口45戸90人、総事業費2590万円、補助費1481万円、地元負担1109万円)、
下り茅水道(給水人口12戸41人、総事業費4780万円、補助費3340万円、地元負担1440万円)
が住民による水道組合のもと安全な水を供給している。
こうした事例は同様の問題に悩む小規模集落や自治体に多いに参考になると思う。
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