アクアコミュニケーターの技術

 

 

aqua-solutions 08

2012.10.18

 

 

限界集落、開発途上国の課題を解決!市民が管理できる小規模給水施設



4. 市民管理の小規模給水施設 ⑷

日本の社会は「大規模集中」の効率のよさを享受しながら発展してきた。

しかし、東日本大震災は大規模集中のマイナスの部分を顕在化させた。

そうしたことからエネルギーの小規模分散という考え方に注目が集まっているが、水道も同様に小規模分散を考えるタイミングにきている。

現在の上下水道システムには、多くのエネルギーが使用される。

上水道では水源からのポンプ取水、浄水場までのポンプ導水、浄水場での浄水処理、ポンプで各家庭まで送水・配水という過程で年間約79億キロワット時の電力をつかっている。

省エネを図るには導水距離を短縮することだ。

地形や地理的な条件によって取水・導水、送水・配水に多くの電力が必要な水道事業がある。

というのも低い場所にある水源から取水して、高いところにある浄水場まで導水したり、遠くのダムから導水したりと「低・遠」の水源を利用している水道事業はかなり多い。

こういうところは「高・近」の水源を検討する。

たとえば伏流水、地下水、雨水を利用する。

高低差を活かして水を運べば導水や送水にかかっていた電力は不要になるし、近場の水なら最小限の電力ですむ。

浄水方法でもコストやエネルギーは変わる。

主な浄水方法には、生物浄化法(緩速ろ過)、急速ろ過、膜ろ過がある。

それぞれにかかるエネルギーを比べると、

 

  • 生物浄化法(緩速ろ過)、
  • 急速ろ過、
  • 膜ろ過

という順番になる。

急速ろ過は、薬によって水に含まれる汚れを沈め、上ずみをジャリや砂でろ過する。

大規模集中型の施設で効率よく浄水する反面、いくつかの欠点もある。

まず急速ろ過は、水溶性有機物やアンモニアを除去することができないので、塩素による殺菌を行う必要がある。

またマンガン、臭気、合成洗剤なども除去することができないので水の味は悪くなる。

このため都市部の水道事業では、高度浄水処理が行われるようになった。

急速ろ過では十分に対応できないカビ臭、カルキ臭などの原因物質をオゾン処理、生物活性炭などで処理する。

経緯を振り返ってみると生物浄化法(緩速ろ過)が急速ろ過へと移行することで、水需要の急速な伸びに大規模集中的に対応し、維持管理の自動化など合理的な面もある。

しかし一方でカビ臭問題などは急速ろ過法の技術的な「穴」であって、そもそも緩速ろ過法のままであれば問題はおきなかった。

これらの問題に技術力で対処すべく、活性炭投入、オゾン処理、膜処理など、さまざまなアップデートが繰り返された。

設備投資や消耗品などのコストとエネルギーが必要になり、水道事業の財政は苦しくなった。

水道事業はコストを利用者数で頭割りすることが原則なので、利用者数の少ない小規模コミュニティーほど、水道料金が高くなるなど負担が顕在化してくる。

そうしたところほど水道シフトが求められている。

厳しい水道経営に対処するため、厚生労働省はスケールメリットで対応すべく「広域化」という方針を打ち出しているが、豊後高田、津山のケースのような小規模集落までも含めた広域化は実際には厳しい。

大規模集中型の政策に漏れる地域が出て来る。

小規模集落、過疎化が進行している町、財政の厳しい町などだ。

要は現場をよくみて適切な解決方法を導入するということだ。