アクアコミュニケーターの技術
aqua-solutions 06
2012.6.5
生態系との共生を図る持続可能な水マネジメント
- 人間社会の発展は水とともにあった
- 供給マネジメントと需要マネジメント
- 生態共生管理というパラダイムシフト
- いかに水を少なく、ではなく、なぜ水をつかうか
- 生態共生管理が生む水代替ビジネス
2. 供給マネジメントと需要マネジメント
これまでとは違った水マネジメントとは何か。
そのまえに、これまでの水マネジメントがどういうものであったかというと、「水需要をいかに満たすか」という目的をもっていたといえる。
現状の水使用量データ、将来の人口予測、経済予測などから需要を計算し、その供給量をいかに確保するかという目的。
つまり、供給に着目したマネジメントである。
(供給マネジメント)
人間の歴史がはじまって以来、水マネジメントと言えば、供給拡大を目的としてきた。
その手段として、現在の水ビジネスが誕生したといえる。
ダム、浄水場が建造され、高性能ポンプのもとパイプラインが延長されてきた。
これによって、多くの人びとが安全な水を得られるようになった。
それはすばらしいことではあるが、その一方で、都市での水使用量が格段に増え、同時に、汚水排出量も増えた。
だが、水資源の不足・枯渇が心配されるようになると、「もっと供給量を増やそう」というマネジメントのままでよいのかと思う。
そこで人間の水使用量をコントロールしようという考えが生まれた。
使用量を減らすことを目的に需要をマネジメントする。
簡単に言えば節水である。
(需要マネジメント)
一般的に行われている節水は、水を効率的につかったり、効率的につかえるような技術をつかう。
そして、節水することで、「お金もかからなくなるよ」という経済的インセンティブから成り立っている。
比較的簡単にできる方法で、持続可能な水利用を考えるとき、とても重要なことだとは思う。
ただし、節水の効果は薄い。
私たちが、100つかっていた水を、いかに90にするか、という考えだからだ。
大切なことではあるが、生態系から失われていく水を、現状維持したり、回復させることができるかといえば、焼け石に水なのである。
いま求められているのは、もっと思い切った方法だ。
じつは、「ウォーター・ソフトパス」という管理手法がある。
米国のピーター・グレイク、カナダのハリー・スウェインら複数の研究者が、エイモリー・ロビンスの「エネルギー・ソフトパス」のコンセプトを淡水に応用できないかと考え出されたもの。
ひとことで言うならば、将来の生態系に必要な水をまず保障し、そのうえで人間の水使用量を逆算して考える。
標題にあるとおり、生態系との共生を図る持続可能な水マネジメントなのだが、やや略して「生態共生管理」と呼ぶことにしよう。
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