アクアコミュニケーターの技術
aqua-solutions 06
2012.6.5
生態系との共生を図る持続可能な水マネジメント
- 人間社会の発展は水とともにあった
- 供給マネジメントと需要マネジメント
- 生態共生管理というパラダイムシフト
- いかに水を少なく、ではなく、なぜ水をつかうか
- 生態共生管理が生む水代替ビジネス
5. 生態共生管理が生む水代替ビジネス
<出典「水マネジメントにおけるウォーター・ソフトパス・アプローチ」吉村和就監修>
私たちは毎日300リットル程度の水を使うが、そのうち水として必要なのものはどれくらいあるだろう。
あらためて考えると、飲み水や食事をつくるときに使う数リットルに過ぎないのではないか。
そのほかの多くは、シャワー、風呂、洗濯、トイレの流し水など、衛生的な暮らしを維持するために使われている。
これを水を使わないほかの方法でまかなうことはできないだろうか。
生産における水使用のチェックしてみると、工業用モーターを冷やすため、植物の成長を促すために使われている。
これらをほかの方法で代替することはできないだろうか。
とりわけ地球上の淡水の約7割は灌漑用水に使われている。
だから、いかに効率的に灌漑を行うかに多くの人が頭を悩ませているわけだ。
だけど、本当の目的は効率的に灌漑を行うことではなく、食物を栽培することだ。
目的を見直すことによって、「もっとたくさんの水が必要だ」という固定観念から解放される。
水質だってそうだろう。
必要な水質は、用途によって変わるから、いつも純度の高い水が必要なわけではない。
ある用途では有害とされる汚水も、ほかの目的では無害、場合によっては有益かもしれない。
そう考えると、ある用途につかった水を別の用途に使用することはできる。
水の循環利用がうまくいけば、それぞれの利用者が必要な水を調達していたときと比べ、水使用量は大きく減る。
たとえば、雨水活用して洗濯し、洗濯のすすぎ水で家庭菜園をやれば、かなりの水使用量を減るだろう。
工場の冷却装置から発生した水を洗浄や他の工業用水として使用し、使用後に再度処理し、再使用すればどれだけ水使用量を減らせるだろうか。
水を大量に供給するというゴールがなくなれば、それに向かって走っていた水ビジネスのあり方も変わる。
生態共生管理のもとでは、水によって提供されている恩恵、たとえば、ものを冷やす、ものを洗い流すを水ではない方法でできないかと模索する。
水そのものの利用は最小限にとどめ、新たな代替品を考え出す。これが新しい水ビジネス。水代替ビジネスである。
そしてもう1つが、水循環ビジネスである。
(これはすでにある)
水代替ビジネスの市場は広い。
家庭、大規模ビル、工場、農場、まち全体、流域全体といった広い範囲に適用できる。
新しい公衆衛生、新しい生産、生態保全を目的とした都市づくりなど枚挙にいとまがない。
水代替ビジネスは、水使用の絶対量を減らすので、生態系保全につながる。
なぜ、そうまでして生態系保全を一生懸命にやるかといえば、自然こそが唯一の水の供給者だからだ。
事業とは哲学や理念を具現化するために生まれる。
こういう社会をつくりたいという思想哲学があり、それを具現化するために事業が生まれる。
有史以来、私たちは水を獲得することでまちを大きくし、都市を発展させてきた。
水供給量の多寡が発展の基礎となった。
供給量を増やすという思想のもと従来型の水ビジネスは大きく発展した。
しかし、生態共生管理という新しい思想のもとでは、それは必ずしも必要ではない。
水源における施策であれ、水の使用に関する施策であれ、環境の持続可能性にリスクを与えるものは必要でない。
生態共生という思想を実現するための新しい水ビジネスが求められている。
Archive
vol.
11
2016.9.1
vol.
10
2016.8.1
vol.
09
2016.4.24
vol.
08
2012.2.9
限界集落、開発途上国の課題を解決! 市民が管理できる小規模給水施設
vol.
07
2012.9.1
vol.
06
2012.6.5
vol.
05
2012.5.2
vol.
04
2012.4.18
vol.
03
2012.4.14
vol.
02
2012.3.9
vol.
01
2012.2.9