アクアコミュニケーターの技術
aqua-solutions 06
2012.6.5
生態系との共生を図る持続可能な水マネジメント
- 人間社会の発展は水とともにあった
- 供給マネジメントと需要マネジメント
- 生態共生管理というパラダイムシフト
- いかに水を少なく、ではなく、なぜ水をつかうか
- 生態共生管理が生む水代替ビジネス
3. 生態共生管理というパラダイムシフト
<出典「水マネジメントにおけるウォーター・ソフトパス・アプローチ」吉村和就監修>
生態との共生を図りながらの水マネジメント。
これはいったいどういうものかというと、まず、将来の生態系全体の保全を考える。
なぜ生態系の維持を考えるかというと、人間に水をもらしてくれるのは、生態系だからである。
そして、そのためには水が必要だ。
生態系は水をつかって生命を保ちながら、水をきれいにしたり、水を生み出すはたらきをしている。
生態系が水を生み出すしくみは、人為的な手法よりはるかに強力だ。
それは科学の発達した現代においてもである。
太陽が海水を上空に運び、雨として地上にもたらすという浄水のしくみ。
干上がったダムを数日で満杯にする台風という給水システム。
とてもまねはできない。
だから生態系の保全をまっさきに考える。
これは環境保護主義者の切なる願いではなく、経済的にも合理的なものだと思う。
では、どうするか。
仮に30年後の社会をイメージしてみる。
このとき、その地域全体の水の量が、降水量、河川水量、地下水量などを計算し100だったとしよう。
そして、生態系を保全するために、60の水が必要だとしよう。
すると人間の使える水の量は40ということになる。
それがわかったら、30年後に40の水でやっていく社会のしくみをつくろうと考える。
これが生態共生管理の基本的な考えだ。
前回紹介した2つの水管理手法とは違う。
いまの使用量は70だけど、10年後には、人口も増えるし、産業も発展するから80必要。
だからなんとか80を確保しようという供給管理。
70、80とドンドンつかい続けたらさすがにやばいから、65にしようかというのが需要管理(節水)。
これらと比べると、発想が大きく異なる。
将来の持続可能な社会の到達点をイメージし、その目標を達成するために、逆算して計画を立てる。
水の使用量を減らすという点では、需要管理(節水)と同じではないかと思うかもしれない。
実際に水使用量を減らす手法は同じものが使われることもあるので、ちょっと紛らわしい。
でも一般的な需要管理は、人間を中心とした視点で考えられている。
単なる水効率利用、短期的な費用対効果が重視される。
一方、生態共生管理は、生態系全体という観点から考える。
生態系を淡水の正当な利用者として認識する。
自然は人類の存在に不可欠であり、人間が生きていくためには、自然が必要とする。
その理由は何より、自然が唯一の水の供給者だからだ。
そして人類に水やその他の恩恵を提供するために、自然も水を必要としている。
健全な生態系は、水をつくるということにおいても、水を浄化するということにおいても、すばらしい機能をもっている。
だから、将来の生態系保全を最重要に考え、そこから逆算して、水使用量を考えていく。
つまり生態共生管理は、単なるノウハウではなく、持続可能性に対する哲学を包含しているといえる。
この点が、これまでの水管理のあり方とは大きく異なっている。
では、それを実践するにはどうしたらよいのか。
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