アクアコミュニケーターの技術

 

 

aqua-solutions 07

2012.9.1

 

 

「低コスト・省エネ」水質浄化のカギを握る超微細気泡



2. 高速魚雷艇のスクリュー腐食が研究のきっかけ

微細気泡の研究は19世紀末に遡る。

1894年、英国海軍が高速魚雷艇の開発テストを行った際、魚雷艇のスクリューが激しく振動し表面が腐食した。

この時、回転するスクリュー表面に多数の気泡が発生した。

 

スクリューの腐食原因は気泡の生成・消滅に関係あるのではないかと考えられた。

スクリューを大きくしたり、回転数を減らすと腐食は軽減したが、今度は魚雷艇のスピードが落ちた。

魚雷艇はスピードが命。

スピードか、腐食防止か。

相容れない課題に悩んだ英国海軍は、物理学者のジョン・ウイリアム・アウトラット
(レイリー卿。1904年「気体の密度に関する研究、およびこの研究により成されたアルゴンの発見」によりノーベル物理学賞受賞)
に究明を依頼。

卿は、発生した泡がスクリュー表面で収縮する際に、乱流、高熱、高圧力を発することを発見し、モデルを作って計算したところ、温度1万℃、圧力1万気圧という結果を得た。

 

その後、さまざまな研究が行われ、現在は人工的に微細気泡を発生させることが可能になり、主に以下の方式が用いられている。

 

  • ① 旋回液流式
    筒状の本体の内部に向け、接線方向より高速で液を圧入し、内部に旋回流を発生させ、上端面中央の孔から噴出させる。
    この時、旋回液流の回転軸付近は動圧分だけ減圧になるため、下端面の孔よりガスを吸引することができる。
    吸引されたガスは上端面の孔を通過する際に微細化され微細気泡を発生する。
  •  

  • ② 加圧溶解式
    空気と水の混相に圧力をかけ、溶解ガス成分を過飽和させた水をつくる。
    減圧弁を用いて水中にフラッシュさせると、過飽和分のガス成分が水中から超微細気泡となって析出する。
  •  

  • ③ エゼクター式
    キャビテーション(液体の運動によって、液中が局部的に低圧となって気泡が生じる現象)が発生するように流路を変形させ超微細気泡を発生させる。
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  • ④ ベンチュリ式
    管の途中に狭い部分を設け、液体と気体を同時に流す。
    液流速の急激な変化により発生した衝撃波が大気泡を粉砕し超微細気泡を発生させる。
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  • ⑤ 混合蒸気直接接触凝集式
    スチームと非凝集性のガスを混合し、ノズルから冷却水中に分散させると、気泡中のスチーム成分は冷却されて水になり収縮するが、非凝集性のガス成分の存在のため完全には凝集できず超微細気泡を生成する。
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  • ⑥ 超音波振動
    超音波の振動を液中に伝えてキャビテーションを起こし超微細気泡を発生させる。
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  • ⑦ 超微細孔式
    ナノレベルの微細孔より気相を噴出させ、さらに微細孔境界に液流を与えることで気相が微細に切断され超微細気泡を発生させる。

超微細気泡チームに属する安斉管鉄と西研デバイズが共同開発した装置は、⑦ の方式であり、微細な孔をもつ特製複合セラミックから1~10㎛の粒径を多量に発生させる。

① から ⑦ のうちで最も少ないエネルギー量で超微細気泡がつくれるため、簡易な太陽光パネル等に接続するだけで連続運転が可能だ。